第7章 『Brown』 (中編)

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第7章 『Brown』 (中編)

Chapter 7 『Brown』  Act III  scene i  8月3日 21:30 「んふふ♪幽霊一体ゲーットォ!」  とある地域、とある建物の中。ニヤリ、といやらしい笑みを口元に湛えた一人の女……ではなく、男性の声が響く。彼の手には大振りの数珠があり、それをぐいっと引き寄せると、“何か”が渦を巻いて中に吸い込まれて行った。 「ひっさし振りにゴーストハント出来たわァ。全く、それもこれもあの霧島五堂達が邪魔して来たせいよキーッ!!」  何層にもなった厚底ブーツでどしどしと地団駄を踏むこの人物は、自称さすらいのゴーストハンター・他称変態オカマの翡翠だ。彼は一通り苛ついた後、ふうとひとつ大きく息を吐き、ぐるりと建物の中を見回す。額に装着したヘッドランプが、古びたソファやテレビ等の家具を照らし出す。ふと、階段周りの壁に飾られた額縁の数々が目に入り、近付いてよーく見てみる。 「ふーん、家族写真ねェ。この五人が“あの本”に載ってた家族ってワケね。さてと、まだまだゲットし――」  言いかけた所で、彼の耳に車のエンジン音が聞こえて来た。ぱちりと額のランプをオフに切り替え、車のドアが開く音に警戒しながら言う。
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