第二話:新宇宙の神になろう

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第二話:新宇宙の神になろう

 「……騙されました、訴訟の用意に動きます!」  「いや、手つかずの縄張りが手に入るって喜んだのはジンリーだからな?」  「旨味のある案件だと思い、シノギの臭いを感じたのですがしくじりました」  「こういうのは上手く行ったらだからな? まだまだ、儲けが出るまでは遠いよ」  「まだ信者になりそうな、知的生命体がいない星ですからねここ」  「子供達を遊ばせるには困らない広さの土地なのは良いけどね♪」  「地球と違い、壊して怒られる建物がありませんしね♪」  「やってることが、リアルな街づくりゲームだよなこの仕事」  「ゲームのように、コマンドクリックで処理されませんけどね」  夫婦漫才をしながら機体のスイッチを入れて行く二人。    立磨とジンリーが変身したドラゴンシフター達は、別宇宙にいた。  地球に似たトパーズ色な大地をした惑星を拠点に活動する二人。  今は、巨大ロボットで食料となる怪獣狩りに挑戦中であった。  牛のような鳴き声が、遥か彼方から彼らにに向かって響いてくる。  「とはいえ、縄張りを手に入れた以上は私達のラブラブユニバース計画は何人にも邪魔はさせません!」  「その調子だ♪ そろそろ、獲物が来るぜハニー♪」  「オッケー、ダーリン♪ これで決めます、ドラゴンスローワー!」  ドラゴンシフターと二号がコックピットで機体を操る。  二人の機体、金龍合神が腕を敵に突き出す。  敵は怪獣、毛の色もエメラルドなマンモスに似た巨大生物だ。  牛のように鳴きながら、金龍合神へと猛突進。  対する金龍合神は、金をメインカラーにした中華武将風スーパーロボット。  機体の兜や肩アーマーが東洋の龍の頭となっている。  機体の肩アーマーが拳までスライドし、金の龍の頭が口を開ける。  龍頭から放たれた超高熱火炎が、巨大なマンモスに似た怪獣を焼き肉にした。  「よっし、皆おいで~♪ ご飯だよ~♪」  「焼きたての美味しそうなお肉ですよ~♪」  怪獣を倒して焼肉に変えた金龍合神が、外部通信をオンにして叫ぶ。  ドラゴンシフター達の叫びに応じたのか、天に暗雲が立ち込める。  龍の鳴き声が空に響き、雲の中から十頭の金色の龍が現れて地上の肉に群がった。  十頭の龍は、立磨とジンリーがこの宇宙で作った新たな子供達だ。  恐怖の大王との戦いから十五年後、立磨とジンリーに天界から与えられた報酬。  それは、新たな宇宙を土地神として治める権利と言う雑な物であった。  地球でヒーローをしつつ金馬達を育てて十数年。  子育ても少し落ち着いたので、何か新しい事をしようと貰ってみた報酬の結果。  別の宇宙で怪獣退治に惑星開発と、スローではないライフを立磨達は営んでいた。  「金馬は日本へ留学、立花もMITに飛び級で留学してひと段落と思ったが」  「まったくそんな事はありませんでしたね、辺境でスローライフとか噓です」  「辺境どころか、別宇宙の惑星だけどな♪」  「屯田兵や開拓民ですね、土地神とか領主と言うよりは」  「まず、この星のテラフォーミオングから始めたよな♪」  「ですね、DIY欲がまた沸いて来ました♪」  「今度休んで、資材補充しに地球に帰って見るか♪」  「良いですね、金馬達の顔も見たいですし♪」  新たに増えた十頭の子供達をロボで撫でつつ、変身を解き機内で語り合う立磨達。  立磨とジンリーの夫婦は、学生時代よりもフリーダムに生きていた。  所変わって、山梨県立ヒーロー高等学校の職員室。  「……ほう、ご両親は惑星開拓事業で宇宙か?」  「はい、向こうで兄妹も増えたそうです」  「彼ららしいな、君のご両親とは面識があるから納得だ」  「家の親って、先生に何したんですか?」  「ああ、君のお父上とは同級生でな♪ 結婚式に招かれたよ」  「……俺、日本に来て親の知り合いが担任の先生になるとか世間は狭いですね」  「私もまさか、友人の子息を受け持つことになるとは思わなかったよ♪ だが、これも何かの縁と言う物だろう♪」  姿勢正しく湯のみでお茶を飲みながら語る飯盛先生。  金馬としては、そう言えば先生に似た眼鏡のお兄さんを見たようなと思い出す。  担任と父親の関係を知り、たじろぐ金馬。  金馬は先日のタニアンとの決闘の件で、リーダーとして呼び出しを受けていた。  「話はそれたが、レポートの提出期限は守るように補習もサボらず受ける事?」  「うっす、頑張って書き上げますけど補習の際に出撃とかなったら?」  「安心したまえ、補習を追加し学業に遅れのないようにケアをしよう♪」  「……うっす、ありがとうございます」  「補習や課題は億劫なのはわかる、だが授業で得られる知識は財産になる。 君達生徒が、卒業後の生きて行く為の知識を得る権利は守られねばならん」  真面目に理由を語る飯盛先生。  生徒の感情も汲み取りつつ、理由や事情を説明して相手と真摯に向き合う態度から生徒や保護者の信頼は厚かった。    何ゆえ金馬が飯盛先生と職員室で話しているのか?  先日の戦いの後、マグナデウスがエネルギー切れした金馬達。  学校に連絡して迎えに来てもらうも、夕方に戻って来たので授業は終わっていた。  マグナデウスチームリーダーの代表として、金馬は先生に報告に来ていたのだ。  結果として単位の救済措置として、補習と戦闘レポートの提出を言い渡される。  「あ、金さんお帰り~♪」  「呼び出しお疲れ様~♪」  「お疲れ様」  「リーダーのお勤め、ご苦労様ですわ♪」  「レポート三日後までに提出だ、放課後は補習もあるからな?」  教室に戻った金馬をチームメイトが出迎える。  金馬は仲間達に職員室で言われた事を通達する。  「仕方ないけど、補習は嫌で~す!」  ドロシーがむくれる。  「まあ、授業には出られなかったから仕方ないよね」  マッシュは渋々ながら頷いて納得する。  「ま、宿題積まれるよりは良いかな♪」  カナメは笑う。  「賞金は学校と持っていかれますわね、公立校ですし」  メープルは残念がる、敵を倒せば賞金などの報酬が発生する。  しかし、公立高校の学生である金馬達は敵を倒しても実習扱いでタダ働き。  賞金は学校に取られ県の収入となり。実績も学校の物となる。  「まあ、バイトなら家の店とか手伝ってよ♪」  カナメが提案する、彼の実家は農家と兼業の個人経営のスーパーだ。  「オ~♪ カナさん家のお手伝い、良いですね~♪」  「うん、小遣いは欲しいしお世話になります」  「チーム皆でお手伝いいたしますわ♪」  「まあ、カナメん家の手伝いは構わねえがな?」  金馬達はカナメの提案に乗る。  「レポートや宿題などは、金馬君のお宅で片付けましょう♪」  「いや、お前が決めるなよ!」  「私、仕切るのは得意ですのよ♪」  「メープルさん、抜け目ないで~す♪」  「うん、マジで上手いよね」  「お貴族様、ヤバイ」  などと休み時間に談笑する金馬達。  それぞれが、自分なりに一般科目の授業をこなして行き昼休み前の四限。  巨大戦闘科の次の授業は射撃実技。  教室から移動し更衣室で着替えて体育館に集まる金馬達。  生徒達は皆、銀色のパーカーを羽織っていた。  手には白いプラスチック性の銃型ガジェット、模擬ビームガン。  当番の生徒が体育館の倉庫を開け、ギターのアンプに似たVRダイブ装置を運び出すと上下白のジャージ姿の女性教師が体育館に入って来た。  「はい、それではVR空間での射撃の実技を始めます」  先生は黒髪ショートでキリッとした顔つきの美人、女子生徒からの人気が高い。  先生が合図をすると生徒が装置のスイッチを入れる。  そして全員が、緑の草原の世界に転移していた。  金馬達の姿は、緑色の軍服姿のアバターの物に変わっていた。  生徒達は五人組を作り、他のチームと模擬ビームガンを用いたサバイバルゲーム形式で戦う。  「良し、みんな背中を合わせろ!」  「防衛軍みたいに?」  「イエッサー♪」  「八時の方向、来るよ!」  「出て来た瞬間を撃ちますわ♪」  金馬達は背中合わせで輪になり片膝をつくフォームで射撃を行う。  相手チームも撃って来るので身を伏せたり木々を遮蔽にして回避し反撃する。  青白いビームがフィールドに飛び交う。  VR世界では本物となる模擬ビームガンのビーム。  これを受けた生徒は、一発ログアウトで現実空間に戻されて行った。  「金馬隊(きんまたい)はここまで全員無事、なら最後は私が相手ね」  生徒達と同じ軍服アバターの先生が、模擬ビームガンを狙撃銃に変形させる。  「ち、マッシュが撃たれた! 先生がどこから撃って来るのかわからねえ!」  「いや、ビームガンサバゲ―の銀メダリストの先生が参加して来るの鬼でしょ!」  「弾道から位置予測が出来ませ~ん!」  「残れたのは私達だけのようでしてよ?」  「木を遮蔽に身を隠せ! 密林でスナイパーはヤバい!」  密林に逃げ込んだ金馬達、だがその行動が先生の罠だった。  まず背の高いマッシュが撃たれてログアウト。  結局、金馬達も先生に狙撃されて皆が現実空間に帰還した。  「はい、お疲れ様♪ ダイブ装置や模擬ビームガンを片付けて!」  先生が手を鳴らしながら片付けを促す。  授業の後片付けを終えた金馬達は、体育館を後にした。  昼休み、午後の授業に放課後の補習とその日の学業を終えた金馬達は下校した。  「ふう、何とか今日の補習は乗り切ったぜ」   「金ちゃん、お疲れ~♪」  「金馬君、ごきげんよう♪」  「皆、また明日~♪」  「金さん、おんぶプリ~ズで~す!」  「おう、お疲れっておい! 人の背中に乗っかるなよドロシー!」  校門前、仲間達と別れて家に帰ろうとした金馬。  彼の背中に突如、ドロシーが飛び乗って来た。  「私の家まで、ハリーで~す♪」  「いや、お前の家って俺の家と逆だろ?」  「金さんならひとっ走りで~す♪」  「しょうがねえな、一気に行くぞ!」  「合点で~す♪ 明日パンおごりま~す♪」  「バス代より安い!」  仲間の一人であるドロシーを背に乗せ、金馬は飛ぶように走った。  「着いたぞ、降りろ」  「サンキュ~♪」  「じゃ、またな!」  ドロシーを彼女の家の前で降ろし、金馬は再び走った。  超人的な速度で人や物を避け、家に辿り着く金馬。  「ただいま~?」  日高邸の引き戸を開ける金馬、戸を開けたまま固まる。  「お帰りなさい金馬、さあ母と久しぶりの再会の抱擁を♪」  「お、金ちゃんお帰り~♪」  「いや、母ちゃん何でいるの? ……って父ちゃん♪」  金馬を出迎えたのは別宇宙に行っていたはずの母、ジンリーであった。  母の後ろから父である立磨がやって来る、父の登場の方が嬉しかった。  「父ちゃん、久しぶりだな♪」  金馬が母ではなく父である立磨に抱き着く。  「ちょ、息子が塩対応! 金馬、そこは母とハグする所ですよ? て言うか、ご主人様と抱き合うのは母の独占権の侵害ですっ!」  「……うん、それはないわ。 母ちゃん、相変わらず父ちゃんへの愛が重いな」  「俺としては、息子が妻に似すぎで困るのは俺なんだが?」  「俺が父ちゃん好きなのは、母ちゃんの遺伝だから」  「ぐぬぬ! 我が息子ながらの納得力、流石は私と推しの間に生まれし子!」    息子の態度と言葉に悔しがるジンリー。  相変わらず夫への愛の方が重いが、母として我が子に愛がないわけではなかった。    「まったく、ちょっと見ない間に少女漫画の生意気ボーイになって!」  ジンリーからすると、自分と立磨の間に生まれた金馬はドラゴン界では少女漫画や乙女ゲームのちょっとワルぶった感じのイケメン王子らしい。  「父ちゃん、母ちゃんがヤバい」  「平常運行だ、まあ早く上がって手洗いとうがいをしなさい」  妻の様子をスルーしつつ、息子に手洗いを促す立磨。  両親の登場に続き、ぞろぞろと居間から赤ちゃんが群れで玄関へとやって来た。  「いや、ちょ! 何か、赤ん坊がぞろぞろと出て来たぞ!」  「「あぶ~~っ♪」」  はいはいで現れた赤ん坊達が、ふわりと宙に浮かび上がり金馬に群がる。  「うおい! 弟か妹かわからねえが、頭とか肩とか乗るな!」  弟妹達に群がられて焦る金馬。  「ああ、ごめん金馬♪ 兄弟十人ほど増えたから♪」  「ちなみに、まだまだ兄弟姉妹は増える予定ですよ金馬♪」  弟妹達に群がられる金馬にさらりととんでもない事を言う立磨とジンリー。  「あらあら、孫がまた増えたわねあなた♪ 私も三人目が欲しいわ♪」  「ああ、頑張るよ母さん♪」  「帰ってきたら、家の中の平均年齢が下がったね」  「いや、祖母ちゃん達この状況受け入れてるの凄いな?」  帰宅した祖父も交え、一気に十四人ほどの大所帯と化した日高邸。  「それでは、金馬の最近の活躍を見せてもらいましょうか?」  ジンリーが、指を鳴らせばデジタルスクリーンがお茶の間に浮かび上がる。  スクリーンからは、マグナデウスの戦いの映像が流れ出した。  「ちょ、何時の間に録画してたんだよ!」  「ちょっと仙術で、マグナデウスと金龍合神をデータリンクさせました♪」  「いや、俺のプライバシー無視すんな!」  「保護者として、母はきちんとあなたを見守ってますよ金馬♪」  「いや、良い話風に言うな!」  「ほっほっほ♪ 母の強さを思い知りなさい♪」  「お前らなあ? でも、戦い自体は良くやってるぞ金馬♪」  立磨が息子の戦いを褒める。  その日は鑑賞会で一家団欒となった。
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