第六話:亡命と追加メンバー

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第六話:亡命と追加メンバー

 「ちきしょう、練習に来ただけなのにどうしてこうなったっ!」  荒野の惑星を舞台に激闘が始まる。    マグナデウス内で金馬が叫び、銃剣付きライフルで武装した軍服に見える装甲をした下級らしいメタロココの巨大ロボット兵士を殴り倒す。  「何ですか、シマ荒らしですかこのロボット共は? 私とご主人様の愛の巣を!」  「いや、ここが奴らの住んでた宇宙だったんだろハニー?」  金龍合神の中では敵襲に憤るドラゴンシフター二号を、ドラゴンシフターが宥めつつこちらも敵兵を殴り倒して行く。  マグナデウス達が前で戦う中。  彼らに守られる巨大なピンクの馬車型の宇宙船の中。  「マグナデウス様、金龍合神様、どうか私達一家をお助け下さいませ!」  「くう、我らもビッグロココが破壊されていなければ!」  「父上、母上! 早く地球へ逃げましょう!」  乗っているのは、地球からは悪の女王と思われていた存在。  赤いドレスを着た金髪縦ロールに白い肌の美女ロボット人間。  メタロココの女王、ドリー・キャストネットが叫ぶ。  彼女の夫、小太り型の青い貴族衣装のロボット人間。  ロココ十五世は戦えない身を悔んでいた。  二人の息子である小型の青い貴族衣装のロボット人間。  王子シャルルは、不安になっていた。  「マグナデウス殿、金龍合神殿、陛下達を宜しくお願い申し上げます」  王家の傍では、黒服の執事姿のロボット人間が祈るように呟く。  「誰であろうと頼られた以上は守り抜くぞ、金馬達も急げ!」  「ああ、ご主人様のその男気に私惚れます昂ります~っ♪」  「やべえ、家族が増えるフラグ立てちまった!」  金龍合神内では夫婦漫才が行なわれ、機体のパワーが上がる。  「追え~っ! 和平などと抜かす王族は処刑しろ~っ!」  メタロココの兵達も、叫びつつ挑む。  別宇宙、立磨達が開拓していた惑星で起こったメタロココ軍との戦闘。  マグナデウスが練習の為に訪れたら、逃げて来たメタロココの王家の馬車型宇宙船と追手の軍と遭遇。  弱きを助け悪しきを挫くのがヒーロー。  ドラゴンシフターがメタロココの王家を助ける事に決めた。  マグナデウスも同意し、メタロココ軍との戦闘開始となったのである。  ロココ調の貴族衣装を着た、金髪のロボット人間の一家と彼らに仕える執事やメイドと言った郎党達が乗る馬車型宇宙船。  敵の射撃の雨から、金龍合神とマグナデウスがバリヤーを張って守る。  「父ちゃん達の出かけてた宇宙、メタロココの本拠宇宙だったのかよ!」  マスクまで全て黄色いドラゴンスーツを装着できるようになった金馬。  コックピット内で起きている状況を叫ぶ。  「まさか、王様達が和平派で議会と軍部が侵略派とか知らなかったで~す!」  ドロシーが機体を操作し放水攻撃をしながら叫ぶ。  学生しながら戦う身で、敵の内部調査なんかやってられない。  「王家のお家騒動あるあるですわね、ロコモバスターですわ!」  メープルが機体を操作すれば機関車の先端部分が開き、灼熱のビームが放たれる!  「難しい事は大人に任せて、とにかく助けて生きて帰ろう!」  「カナメに同意、大会だってあるんだ!」  カナメとマッシュがそれぞれ考えを述べる。  「よっし、全機分離! 地球へ帰還だ!」  金馬が叫び、マグナデウスが分離。  戦線を離脱し、宇宙空間に開いた青い光の穴である次元ゲートに全機が突っ込む。  「おのれマグナデウスめ! こうなれば地球への追撃を進言だ!」  敵兵ロボの残骸の中、岩陰から出て来た髭面でずんぐり体形の指揮官ロボット。  戦いの中自分だけ身を隠して、見物していた卑怯な男が叫ぶ。  「あらあら♪ 謀反なんて大変でしたねえ♪」  「いや、父ちゃん達が助けるって決めたけど色々と大丈夫なのか?」  「お世話になります、シャルル・ド・メタロココです」  「良いんじゃない♪ 家もまだ部屋はあるし♪」  「君も大変だろうが、私達は家族だ安心して暮らしなさい♪」  「祖父ちゃんと祖母ちゃんとおばちゃん、キャパすげえな?」    日高邸の居間、雛菊と拓馬夫妻と夏美と金馬。  彼らと向き合うのは、亡命して来たメタロココ王家の王子シャルル。  青い貴族服から黒学ランへ。  短い金髪に白い肌の美少年と言う具合のロボット人間。  機械っぽさは、陶器のような白い肌と時折回路図のように体に光の線が浮かぶ。  金馬達と同じ学校。  山梨県立ヒーロー高等学校の制服にシャルルは身を包んでいた。  「金馬、夏美? 学校では、シャルル君を頼んだぞ?」  拓馬が金馬達に念を押す。  「わかってるぜ祖父ちゃん♪」  「うん、シャルル君ももう身内だしね♪」  「皆さん、お気遣いありがとうございます♪」  「あなたったら、お優しいんですのね♪」  「いや、立磨が転校するまでボッチ気味だったのがな?」  「父ちゃん、こっちでの学生時代どんなだったんだよ?」  「まあ、シャルル君も学校で友達出来ると良いわね♪」  和気藹々と語らう金馬達。  紆余曲折あり、メタロココ王家の亡命は地球に受け入れられた。  黄家龍王軍の預かりとなり、シャルルの両親はロンスターの系列企業である建設会社や工場に就職して働いていた。  シャルルは日本へ留学し、日高邸の住人となった。  当然文句を言う輩は出たには出た。  「我等は、仁と侠の思想を重んじ庇護下の客はあらゆる手段で守ります!」  あらゆる文句は、ジンリーがドラゴンパワーとマネーパワーで黙らせた。  「これが地球の学校なんですね、金馬さん♪」  「ああ、まあ他にも色々あるがな今日からお前もこの学園の一員だ♪」  「む~っ! 男の子二人で仲良くなって狡くない?」  「まあまあ、それにしても色んな種族がいるんですね♪」  「地球には、あちこちから色々な奴が来るからな」  「敵対してた所からも来てるから、シャルルは気にしないで♪」  「夏美さん、お気遣いありがとうございます」  生機融合体のロボット人間なシャルルは、自分が普通に思えるほどこの学園の生徒の種族は人間以外にも多種多様であった。  シャルルは不安がってはいたが、あっさりと受け入れられた。  昼休み、各自が好きなように昼飯を摂る中。  「雛菊さんのお弁当、美味しいですね♪ お米とか卵焼きとか♪」  生物と機械の完全なハイブリッドと言うべき、超生命体のシャルル。  無事に受け入れられて安堵したのか、雛菊が作った弁当を元気に食べていた。  「ああ、美味いぞ♪ 命の味だ♪」  「これが、生命が生み出す滋味♪ 僕も守りたい、この星を♪」  「ああ、皆で守って行こうぜ♪」  「メタロココの民達にも、味わって欲しい」  「なら、今の体制を倒して世直しだな嫌な話だが勝たなきゃ話し合えねえ」  「はい、地球とメタロココの関係改善の為に頑張って行きます♪」  「手伝えることは手伝うよ」  シャルルと教室で一緒に弁当を食う金馬が答える。  カナメ達は、そんな金馬とシャルルの様子を見守っていた。  「シャルルさん、楽しそうで~す♪」  「良かったですわ♪」  「うん、良い話だ」  「シャルル君も遊びとか、仲間に誘って行こうか♪」  パンや弁当を食いながら金馬達を見物するカナメ達。  午後の授業が終わり、部活の時間となった教室。  シャルルが金馬に声をかける。  「金馬さん、僕もロボットファイト部に入部します♪」  「ああ、良いぜ♪ よろしくな♪」  日高邸で暮らしている流れで、シャルルもロボファイト部の一員となった。  「ようこそですわ、シャルルさん♪」  「ウェルカムで~す♪」  「シャルル君、よろしく~♪」  「うん、よろしくね♪」  部室では先に来ていたカナメ達が金馬とシャルルを出迎えた。  「はい、皆さん受け入れありがとうございます♪」  シャルルが礼を言う横で、金馬が仲間達にサムズアップ。  続いて顧問の飯盛先生が入って来た。  「皆揃ているな、シャルル君もこれから宜しく頼む」  「はい、先生には部活でもお世話になります♪」  先生に挨拶をするシャルル。    「そう言えば、シャルルさんの機体はどういたしますの?」  「僕の機体は製造中なので、勉強も兼ねて今年の夏の大会はマネージャーとして参加させていただく予定です♪」  「ああ、マネージャーも大事なメンバーだからな♪」  メープルの問いかけにシャルルが答え、飯盛先生が微笑む。  「そう言えば、メタロココ軍って自力で巨大化できないの?」  カナメがシャルルに尋ねる。  「できません、皆さんが倒して来たのは拡大コピーロボと言うべき機体です」  「もしかして、自分のデータをもとに巨大ロボを作り乗っていたとかですか?」  「はい、下士官からは改造した機体を遠隔操作です」  「どおりで似たような奴らが出てくるわけだ」  「このコピー技術、宇宙レベルで生物も魂ごとコピーできます」  続いて、ドロシーの質問に答えるシャルル。  サラリと思い技術情報が開示された。  「てことは、いつぞや倒したタニアンもか?」  「ええ、僕らを本星から逃がしてくれたのはタニアンです。 彼から、あなた達なら助けてくれるかもしれないと言う事であの星に逃げて来ました」  金馬の呟きに答えるシャルル。  「あの時の、王家への忠誠は本物だったんだ」  マッシュが、タニアンの事を思い出して呟く。  「まあ、託された以上は任されたぜ」  金馬もタニアンを思い出して呟く。  「僕もただ守られるだけじゃなく、守り合って行きたいと思います」  シャルルが拳を握る。  「まあまあ、お固いですわよ♪ 侵略を防ぎつつ人生を楽しみましょう♪」  メープルが語りながら高笑いを上げる。  「イエ~ス♪ 笑う門には福来るで~す♪」  ドロシーはアメリカンな高笑い。  「うむ、その通りだ♪ 笑顔が運気を切り開く♪」  先生も笑う。  「うん、笑おう♪ シャルル君と出会えた喜びを♪」  「恥ずかしいけれど、嫌いじゃない♪」  「よっしゃ、笑え笑え♪ 笑顔で邪気を吹き飛ばせ♪」  「皆さん、良い人達ですね♪ 何でだろ、笑いながら涙が♪」  「嬉し泣きって奴だぜ、シャルル♪」  「……く、敵対していた相手との友情っ! 良い生徒達だっ!」  飯盛先生も泣き出した。  カナメもマッシュも金馬もシャルルも、皆が泣き笑いして心の緊張をほぐした。   六人目も加わったロボットファイト部、この日はシャルルの歓迎会となった。  土曜日、シャルルも加えた六人は朝から商店街の片隅の雑貨屋。  もとい、明日野家の個人経営スーパーで労働に励んでいた。  「これが、地球のアルバイトなんですね♪」  白シャツと黒のスラックスの上に。店のロゴ入りの赤いエプロンを付けたシャルルが微笑む。  「いや、そうなんだけど名目上は家の手伝いだから?」  カナメが人差し指を立てて呟く。  「はい、あいまいに誤魔化します♪」  シャルルが笑顔で頷く、シャルルとの親睦を深める方法として同じ作業をする。  金馬達がこれまで時折やっていた、バイトと言うと校則違反だが友達の家の手伝いと言う抜け道でやる小遣い稼ぎをやる事になった。  「チームワークの訓練で~す♪」  雑貨の品出しをしながらドロシーが皆に告げる。  「皆で社会勉強だ♪」  「うん、世慣れして行くためには必要」  金馬とマッシュも野菜などの陳列をしながら語る。  「お~っほっほ♪ お惣菜の実演販売はお手のものですわ♪」  高笑いだけはご令嬢なメープル。  「友達と一緒に何かするって楽しいですね♪」  王子暮らしで友達と一緒に働くなど初めてなシャルル。  彼の人当たりの良い接客と、手際の良い袋詰めは好評だった。  「シャルル君、ありがとう♪」  「素晴らしい働きぶりでしたわ♪」  「お客さんも喜んでた」  「売上すごかったで~す♪」  「いや、初日から神がかってたなシャルル♪」  バイト後、金馬達がシャルルを讃える。  「どういたしまして、これが僕が初めて稼いだお金♪」  貰った日当の一万円を見て感動するシャルル。  「初々しいな、初心を思い出したぜ♪」  「働いた成果を感じられるって、嬉しいで~す♪」  「エモいですわ♪」  「微笑ましい♪」  「本当に、ありがとうシャルル君♪」  シャルルも加えて、仲間達と青春を堪能する金馬であった。  「ここが、甘味処ですか?」  「ああ、地球の日本の菓子や飲み物を楽しめる店だ♪」  「クリームあんみつがお勧めですわ♪」  「信玄餅もグッドで~す♪」  「俺達の行動範囲で、シャルル君に日本を好きになて貰いたいんだ♪」  「日常を楽しむ事で、守りたい気持ちを強められる」  日曜日の昼、学校近くの甘味処へ金馬達はシャルルを伴いやって来た。  「なるほど、ありがとうございます♪」  趣旨を聞いて礼を言うシャルル。  「心の拠り所は沢山あると、生きる力になるからな♪」  「新たな郷土を愛する気持ちを育んでいただきますわよ♪」  「僕、地球に来れて良かったです♪」  金馬とメープルが告げる、シャルルは仲間達の優しさに胸が暖まった。
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