第七話:龍鉄合体、マグナシャルル!

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第七話:龍鉄合体、マグナシャルル!

 「シャルル、白のドラゴンスーツが決ってるな♪」  「ありがとうございます♪ 機体もできたらしいので楽しみです♪」  「どんなロボットか、楽しみで~す♪」  「僕達の機体とも連動できるんだよね?」  「金馬君とシャルル君でコアを交代できるんですのね♪」  「全部合体もできるって、やばいね♪」  「試合用と実戦用で、換装もできるようにするそうです」  「シャルルの機体、妹の立花が設計に関わてるんだ♪」  放課後の部室。  シャルルが白いドラゴンモチーフのスーツを着た姿を見ながら、語り合う金馬達。  時間が掛かると思われていた、シャルルの機体の開発と製造。  だが、その期間は一気に短縮された。  メタロココ一の頭脳と万能の製造技術を持つ元国王。  彼が持ち出した、王家のスーパーロボットの設計図をロンスターに提供。  仙術と科学でロボを生み出す天才、ドラゴンシフター三号ことジンリン。  MITで宇宙ロボット工学を学ぶ天才児の立花。  三人の天才が出会い、ジンリンと立花がメタロココの技術をスピードラーニング。  元国王が仙術と地球の技術をスピードラーニングして学び合った事で、金馬達の操るマグナデウスの兄弟機とも言えるシャルルロアと言う機体が完成した。  「あ、タブレットの方にシンリンおばちゃんから動画が送られて来た♪」  金馬が鞄からタブレットPCを出して操作し、仲間達に見せる。  「やっほ~♪ 金ちゃんに、ユースの皆見てる~♪」  白い工事用ヘルメットを被った、白衣の金髪ツインテールの眼鏡っ子。  何処かドロシーと似た感じのジンリンが、工場のハンガー内で手を振る。  「はい、こちらの白い騎士みたいなスーパーロボットがシャルルロアだよ♪」  ジンリンが背後に腕を向ければ、五十メートルほどの白い鎧の騎士と言うロボットが聳え立っていた。  「これが、僕の機体♪」  シャルルが機体を見て感動する。  「何か、神々しい白さだね」  マッシュが呟く。  「パラディンと言う感じですわ♪」  西洋圏出身のメープルが微笑む。  「流石です、ミスジンリン♪」  ドロシーはロボよりも、ジンリンに瞳を輝かせていた。  「これに、俺達の機体も合体とかできるんだね」  カナメが感心したように呟く。  「シャルル君は、試運転と受け取りにこっちに来てね♪」  画面の中のジンリンが告げて動画が終わる。  「やったな、シャルル♪」  「はい、僕の機体ができたんだ♪」  「喜ばしい事ですが、手にした力に酔ってはいけませんわよ?」  「ロボを手に入れたからって、速攻で敵地に乗り込むとかアウトで~す!」  それはそれとして、シャルルに釘を刺す仲間達。  力を手に入れたら使いたくなるもの、だが力と万能感に酔ってはいけない。  「……ありがとうございます。 これで僕もやれるって思っちゃいました」  シャルルが仲間達に礼を言う。  「戦う時は、家の父ちゃん達も含めて皆で行こうぜ♪」  金馬がシャルルに微笑みかける。  「はい、皆さん宜しくお願いします♪」  シャルルが微笑み返して仲間帯に頼む。  「店の手伝いや、学校が休みの時とかでなら♪」  「私は、お代は鉄道敷き放題の星一つで宜しくってよ♪」  「いや、二人共軽すぎる!」  カナメとメープルに対してツッコむマッシュ。  「その前に中間テストで~す!」  「そうだな、赤点取ったら戦えなくなる」  「なら、勉強も頑張らないとですね♪」  ドロシーの言葉に、金馬とシャルルが答えた。  「何でしょう、古典の人物が駄目な人に見えてしまいます」  「うん、現代人からするとそうだよね」  「今も昔も人は駄目な物ですわね」  「それを言っちゃあおしまいで~す!」  「皆、手心をあげようね」  「随筆より、軍記物の方が好きだな俺は」  部活の時間に、部室で試験勉強。  古文の試験範囲にあ~だこ~だ言い合う金馬達。  全員が中間テストを乗り切り迎えた週末。  金馬達は学生服姿でヘルメットを被り、中国にある工場にいた。  「ほっほっほ~♪ ようこそ、ロンスターファクトリーへ♪」  金馬達に笑顔で語るのは、黄色いヘルメットに緑色の作業着を着た男性。  シャルルに似た、小太りなロボット人間であった。  「父上、お久しぶりです♪」  「シャルル君、ここでは工場長で頼むよ♪」  「はい、工場長♪」  シャルルが国王から工場長となった、ロココ十五世に注意される。  「何だか、楽しそうで~す♪」  「いや、国王から工場長って変わりすぎでしょ!」  「家の鉄道会社に、ヘッドハンティングしたいですわ♪」  「まあ、工場長の話を聞こうぜ皆♪」  金馬が工場長に話を振る、金馬達が案内された場所はロボットの格納庫。  作業音が響く中、整備用のハンガーに直立で固定されている巨大な白き騎士。  新たなロボット、シャルルロアのドッグであった。  「どうも♪ 皆様には、シャルルロアの各種テストに参加していただきます♪」  工場長が用件を語った。  「ああ、任せてくれ♪ 色々できそうで楽しみだ♪」  金馬が笑う。  「手数が増えるのは良いよね、申請できないかな?」  カナメが今からでもシャルルロアを夏の大会にねじ込めないか考える。  「それなら改めて、規約とか見直さないとね」  マッシュが呟く。  「それはそれとして、テストで~す♪」  ドロシーがはしゃぐ。  「そう言えば、その機体はシフトコードなどへの対応は可能なんですの?」  メープルが疑問を口にする。  シフトコードは本来のサイズと、玩具サイズの携帯モードへの変形機能。  「ええ、ご安心下さい勿論対応しておりますよ♪」  工場長が笑顔で答える。  「それでは、僕は乗り込んでから行きますので皆さんは先にテスト場へ♪」  シャルルが笑顔でドラゴンスーツとマスクを身に纏い、機体へと向かう。  「皆様、息子の事をこれからも宜しくお願いいたします」  工場長が金馬達にシャルルを頼んだ。  「おう、任されたぜ♪」  「こちらこそです」  「シャルルさん、楽しい人で~す♪」  「もう友達だから、見捨てない」  「お~っほっほっほ♪ お任せ下さいませ♪」  金馬達がそれぞれ答えると、先にハンガーを後にする。  乗り込んだシャルルは、シートに座りレバーを握りトリガーを引く。  コックピット内が明るくなり、眼前のモニターが外の様子を映す。  スーツ越しでも指紋や生体情報が機体に登録されたのが、スーツと機体のリンク機能によりマスク内のディスプレイに表示されていた。  「これが僕の機体、もう一人の僕♪ 声紋および視線入力機能オン!」  シャルルの声に反応し、マスクのディスプレイにメッセージが表示されて行く。  「工場長、機体のロック解除と屋根の展開をお願いします!」  機体の外へ通信を行い、シャルルロアの固定を解除してもらう。  「ロック解除良し、シャルルロアを射出する!」  「宜しくお願いします!」  工場長とやり取りを行えば、屋根が開くのと同時にハンガーがカタパルトになる。  シャルルロアはドッグから、空へと打ち上げられた。  「気持ち悪い感覚、これが惑星の空を飛ぶって感覚っ? バーニア起動っ!」  初めて機体を飛ばし空を飛んだシャルル。  機体の背部と足裏のバーニアを吹かして、ひとまずはホバリング状態になる。  「シャルル君、大丈夫?」  コックピットのモニターに、デジタルスクリーンが浮かびカナメが通信を入れる。    「無事起動できましたね♪」  ドロシーも通信を入れてきた。  「お迎えに上がりましたわ♪」  「飛んでるならこのまま、飛行テストしようぜ♪」  メープルや金馬も、シャルルを心配して通信を入れる。  シャルルロアの周囲には、いつの間にかマグナデウスチームが全機集っていた。  「みなさん、ありがとうございます♪」  自分を案じて来てくれた仲間に礼を言うシャルル。  これから仲間達と楽しく訓練、と言う空気を壊す通信が彼らの機体に入った。  「ヘイ、キッズ達! 訓練は実戦に切り替えよ!」  金髪縦ロールの美女、ジンファが通信を入れて来る。  「現場のデータは送ったわ、怪獣退治をひと狩りお願いね♪」  「マジかよ、山間部の集落に怪獣のが迫ってやがる!」  「そう言う事、頼んだわよヒーロー達♪」  通信を切るジンファ。  「行きましょう皆さん、宜しくお願いします!」  「おう、ならここで合体してぶっこむぜ♪」  「そうだね、段階飛ばすけど一気に行こう♪」  「シャルルさんがコアですわね♪」  「新しい合体、燃えるね」  「全部合体でゴ~で~す♪」  かくして、空中でシャルルロアをコアに新たな合体シークエンスが開始される。  「はい、フェニックスは背中っと♪」  カナメが最初に、マグナフェニックスをシャルルロアの背後に合体させる。  「マグナファンロン、セパレート!」  金馬のマグナファンロンが首と銅と尻尾が分離。  首はシャルルロアの兜。  胴体は更に左右に分離しシャルルロアの胸部装甲と肩鎧とになる。  尻尾はドリルランスとなって右腕に合体。  「ロコモは右足ですわ♪」  「タートルは左手で~す♪」  「ウルフは右足になるね♪」  メープルたちは各自の宣言通りに合体して行く。  白き騎士から金の龍の大帝へとシャルルロアはバージョンアップを果たした。  「完成、マグナシャルル!」  合体を終えてシャルルが叫ぶ。  「それじゃあ、シャルルも加えて行くぜ♪」  金馬が音頭を取る。  「「龍鉄合体マグナシャルル! コンバット、ゴ~~ッ♪」」  全員で叫び、マグナシャルルは光となって現場へと飛び立った。  山の麓の集落、唸り声を上げて山から降りて来るのは白いゴリラ型の怪獣。  街から遠く、軍もヒーローも手が届きにくい場所。  集落の住民に逃げ場はなく、家に閉じこもるしかない。  「そうはさせない! テールランスチャージ!」  シャルルがメインで操るマグナシャルルが、救いの手として天より舞い降りた。  帯電しながら回転するテールランスが、怪獣の白い胸毛を削り突き飛ばす。  「どうするシャルル?」  まずは敵に一撃を入れ、集落への侵入を阻止したシャルルに金馬が尋ねる。  「心苦しいですが、人々の為に命を刈り取らせていただきます」    敵の命を奪う事を決断するシャルル。  「わかった、倒したら弔ってやろう」  金馬が頷く。  「怪獣も命ですが、私達が守るべきは人と人の営みで~す!」  「悲しいけど、やるしかない」  ドロシーとマッシュも決断する。  「敵が起きましたわよ!」  「まだ痺れてるっぽいけど、このまま行こう!」  メープルが叫び、カナメが止めを促す。  「一気に決めます! ランスにエネルギーを!」  「「了解っ!」」  シャルルの決断に金案達が答え、テールランスが白く輝く。  「極光の一撃、シャイニングチャージ!」  シャルルが叫びレバーを押し込む目場、マグナシャルルが槍を構えて敵へと突進。  白き輝きを放つ槍は怪獣の胸を貫くと、余剰のエネルギーが怪獣の体全てを包み込んで消し去った。  「……これにてお別れです、お休みなさい」  自らの手で唸った命を弔うように呟くシャルル。  金馬達は黙祷を奉げ、倒した怪獣への弔いとした。  周囲が静けさを取り戻し、建物から人々が出て来た時に見たもの。  空へと飛び立ち帰還する、マグナシャルルの悲しそうな雄姿であった。  工場へと戻ったマグナシャルルは分離し、全機体を洗浄した後にお祓いをした。  パイロットのメンタルケアとして、シャルルが暮らしている日高家が仏教である事から僧侶を招き倒した怪獣を供養する法要を執り行った。  金馬達は学生服を喪服代わりに着て参加し、怪獣の成仏を祈った。  「これが、戦いで命を奪うと言う事なんですね?」  「ああ、やらなきゃこっちが奪われて守らなきゃいけない人達の命も奪われる」  シャルルの言葉に金馬が答える。  「でも、倒した相手を悼む気持ちは大事だよ」  「世の中には悔むどころか居直る悪党はいっぱいいま~す」  「シャルル君は、そのお気持ちを忘れないで下さいませ♪」  「うん、優しさを忘れないのは大事」  カナメ達もシャルルを慰める。  「ありがとうございます、僕は心も強くなりますっ!」  「俺達と一緒にみんなで強くなろうぜ、今日は悲しみの気持ちを脱し切ろう♪」  金馬もシャルルを慰める。  初めての実戦と勝利を経験したシャルル、そこに喜びはなかった。  シャルルを通して、金馬達も戦いと命のやり取りについて思いなおしていた。  後日、改めて予定していたテストと訓練をこなした金馬達は日本へと帰国した。  「中間が終わったと思ったら、今度は期末テストか~っ!」  「だ、大丈夫ですよ金馬さん! 皆で乗り越えられたんだから今度も行けます!」  帰国後、今度は期末テストにメンタルが落ち込む金馬を励ますシャルル。  「シャルル君の次は金ちゃんが落ち込んでるよ?」  「金馬君、男児たるものしっかりなさいな♪」  「そうで~す♪ 金さんは落ち込んでるんは似合いませ~ん♪」  「筋肉馬鹿だもん、根性出そう?」  「いや、お前らなあ? 慰めてんのか、馬鹿にしてるのかわかんねえよ!」  雄叫びを上げ、己を昂らせる金馬であった。
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