騙される彼女

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彼女は、騙されなかった。 彼女は、トラックにひかれそうな子どもを助けようとしたらしい。 トラックにひかれそうになった子どもを突き飛ばして、大けがをした。 前身骨折をしてしまったけれど奇跡的に彼女は生きていた。 僕は、彼女と向き合いながら 「子どもを助けようとしたことは立派だと思う。でもどうしてそんなことをしたんだい。」 彼女は、僕の顔をしっかり見て言った。 「自分も怖いって思ったの。きっと死んじゃうかもしれないって恐怖で足がすくんだわ。でも、頭が急に働いて、目の前に生きている子どもが死んでしまう様子を私は見たくないって思ったら私の体が勝手に動いていたのよ」 彼女は、不思議ね。と骨折をしてしまった包帯だらけの両手を見つめた。 彼女は、優しく微笑む。 「詐欺にあった時、本当は自分のしてきたことは全て無駄だって思ったわ。きっと私が人に優しくしたからってその人が私にやさしくなるわけじゃないからね」 彼女は、少し考えた後僕の目を見ていった。 「私は後悔したくないの。後悔を残したまま死にたくはないわ。」 彼女は、そう言うと、ふわっと微笑み自分の怪我した体を誇らしげに見つめた。
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