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彼女は騙される。
彼女の友人が、今詐欺にあってお金がないから貸してほしいといったら、必ず彼女は財布を取り出し、財布ごと友人に渡してしまった。
彼女はしっかり友人の手を握りしめ、
「お金はいつでも返していいからね、私にできることがあるんだったら、絶対行ってね」
と言った。
彼女の友達は、「ありがとね」といってスキップして彼女のもとを去る。絶対騙されているよ。と彼女に伝えても彼女は
「いいの。だまされたっていいのよ。もしあの子が本当に困っていて、もしあの子が困ったまま死んじゃったりしたら、わたしなんであの子を助けなかったんだろうって後悔しちゃうと思うわ」
と長いワンピースをひらひらさせて、僕の顔を見て笑顔で言った。その月の彼女のご飯は、もやしとキャベツだけになってしまったらしい。でも彼女は、変わらず笑顔だった。
「いいの。キャベツともやしの炒め物も美味しいものよ。こんなに安いとおもっていた野菜だけで、美味しいものがたべられるなんて、お値段以上のものってこういうことをいうのね。」
美味しそうに野菜を口いっぱいにほおばりながらつぶやいた。
「こんな美味しいものに出合えたのは、お金を貸した彼女のおかげだわ。もしかしたら私が彼女に優しくできたから、かもしれないわね」
と、僕に話してくれた。
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