幼馴染の嘘

74/85
前へ
/85ページ
次へ
「どうやら卒業後に結婚するためにあちらにご挨拶に行ったけどお父様に反対されて、それを二人で許してもらおうとしてるみたいなのよ、て由美ちゃんが言うから、お母さん大変だと思って。だって真希はまだ航くんが好きみたいだったから・・・」 だけどもしかしたら、僕はもう思いを吹っ切ってるかもしれないと思ったけれど、先週の希の誕生日で会った僕は相変わらず航平を思っていた・・・て言うか、僕、そんなにバレバレなの? 「真希と航くんて、最後はなんだかギクシャクしていて、きっとなにか仲違いをしてしまったと思ったのよ。真希は希がいるから自分から会うなんて絶対に言わないけど、航くんからも何も言わないなんて変だと思ってね、それとなく由美ちゃんに訊いたら、毎年帰ってくる前に真希が帰ってくるか訊いてくるって言うじゃない?これはもしかして、航くんは会いたいけど喧嘩した手前連絡が取りにくいんじゃないかと思ったのよ」 それで実家に戻れと言ったらしい。 「航くんは結婚したいほど好きな彼女がいるけど、真希の思いはまだ航くんにあったから、このまま何も無く終わったら、きっと真希は引きずって立ち直れないんじゃないかと思ったのよ。だから良くも悪くも真希の気持ちに決着をつけさせてあげたくて。それになんて言うか、あちらのお嬢さんには申し訳ないけど、航くんも真希に会ったら昔の思いがよみがえったりしないかしら・・・なんてね・・・」 そう言ってお茶目にふふっと笑った。 「私はやっぱり真希のお母さんだから、真希が幸せになることを一番望んでしまうのよ。ダメだと思っていても、もしかしたらの可能性を考えちゃうの」 それであの時の卒業後は戻ってらっしゃい発言になり、その前に一度様子を見がてら希を連れて帰ってきたらどうだと後で言うつもりだったらしい。というのも、航平が春休みいっぱい実家にいることを聞いていたので、それまでに一度僕を航平に会わせたかったのだそうだ。でも急にそんなことを言っても帰ってこないだろうから、その前に卒業後のことを言って僕に帰るように仕向けるつもりだったらしい。 「航くんと会って、それでもダメならダメで良かったのよ。予定通り先生の所にお世話になりつつ独立の目処を立ててもらえばいいから。それに子供がいることをご近所にそれとなく知らせておけば、真希もこれから帰省しやすくなるでしょ?」 そう思っていたら、いきなり先生と結婚すると言われて母はかなり焦ったらしい。どうしてそこで先生との結婚になるのか。僕は航平が好きだったんじゃないのか。だけど僕が航平と話している間に会った先生の話に先生も同じ思いだと知って、二人・・・というかずっと黙っているけど父も知っているので、三人は共謀することにしたのだそうだ。 「東雲先生から、どうやら航くんも真希を思ってるようだと聞いて、もうお母さん昨日からずっとどきどきし通しよ」 そう言って母が少女のように目をきらきらさせて頬を赤らめるから、僕はもう恥ずかしくて仕方がない。航平の言う通り、僕達は先生の手のひらの上で転がされ、両親に恋の行方を心配されていたのだ。 「それで、どうだったの?上手くいったんでしょ?想定以上ってどう言うこと?航くん、彼女は大丈夫なの?」 今度はこっちの番とばかりに母が質問攻めにする。 彼女とはきっと偽装彼女のことで、航平の母が誤解したのは、彼女の就職のことだ。だからそれをまず説明したのだけど、どう言うのかと思ったら、航平は馬鹿正直に偽装のことも話していた。よっぽど嘘と隠し事に懲りたらしい。まあ、下手に誤魔化して誤解されても厄介だからね。 「やだ航くん。じゃあずっと彼女いながら、真希が好きだったの?」 その言い方だと酷い男だなと思っていたら、航平がすかさず訂正した。 「お試し彼女です」 「でも彼女は彼女でしょ?すっかり騙されちゃったわよ。私も由美ちゃんも航くんは真希への思いがなくなっちゃったと思ったもの。真希だって知らなかったでしょ?航くんが真希を好きだなんて」 知ってたらこんなに悩まないし、こんなに拗れなかった。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1957人が本棚に入れています
本棚に追加