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「こんなこと今更言っても仕方ないけど、初めから二人の思いが通じ合っていたら、真希もあんなことしなかったのにね」
その言葉に航平が反応する。
「あんなこと?」
僕も分からず、一瞬考える。
「まさか真希が出会い系なんて・・・」
と言った所で、僕はハッとして『あぁっ!』と叫んだ。
そうだ。まだ言ってなかったじゃないかっ。
慌てて叫んだけど、航平は母の言葉を聞き逃さなかった。
「出会い系?」
「違うんだ、航平。母さんもごめん、僕嘘ついた」
そう言って僕は希の父親について、ついた嘘と本当のことを話した。
「あの時は本当のことが言えなくて、思い余って出会い系で知り合った人としちゃって妊娠したって言ったけど、本当は発情した航平との事故で妊娠したんだ」
出会い系云々で航平が怖い気を出したけど、本当に全くの嘘だと説明して何とかそれを収めてもらった。
「じゃあ、希は航くんの子なの?」
僕の説明に母はおろか、父も驚いている。そんな二人に、航平が頭を下げた。
「おじさんおばさん、ごめん。初めての発情に俺がその事を覚えてなくて、だから真希は嘘をつくしか無かったんだ。真希は悪くない。悪いのは俺だから。だから本当にごめん」
航平は悪くない。全部隠してなかったことにしたのは僕だ。でも航平は自分が悪いと両親に頭を下げた。
「航くんが謝ることないわ。きっと真希だって色々悩んで言わなかったんでしょうから、どちらが悪いわけじゃないわよ。事故だったの。それより大事なのはこれからでしょ?」
そう言って母が僕達に話を促すから、僕と航平は一瞬視線を合わせ、居住まいを正した。
「おじさん、おばさん。俺と真希は一緒になるって決めたんだ。だから俺達の結婚を許してください」
そう言って再び頭を下げる航平に合わせて僕も下げる。するとほっとしたような父の声が聞こえた。
「もちろんだよ。真希と幸せになってくれ」
「そうよ。たくさん悩んだ分、いっぱい幸せにならないとね」
そう言ってくれる両親に、僕は感謝の気持ちでいっぱいになる。
「所でこのこと、由美ちゃんたちは知ってるの?」
そう言う母の言葉に、そう言えばこっちのことばかり考えてて、航平の両親にはまだ言って無かったことに気づく。
「今日は二人とも朝から出かけてて、まだ話してないんだ」
航平の両親、出かけてるんだ。
「お帰りは遅いの?」
「いや、そろそろ帰ってくる頃じゃなかと思うけど・・・」
そう言いながらスマホを取り出して何やら打ち始めた。きっとメッセージを送ってるんだろう。
「あ、帰って来てるって」
「じゃあ、二人ともこちらに来てもらいましょう。航くん、由美ちゃんたち来れるか訊いてくれる?」
え?
こっちに来てもらうの?
きっと全く事情を知らない航平の両親は、結婚は彼女じゃなくて僕とするとか、実は子どもがいるとか急に聞かされるんだよね。
ちょっと待って、それ今するの?
いきなりのその展開に僕は慌てるけど、両親も航平も至って普通に話を進めてしまう。
「え・・・来るの?今から?」
どうやら来れるらしく、母が来客の準備を始める。と、そこにインターホンが鳴った。まあお隣さんだから早いよね。
それを出迎え、リビングでことの次第を全て話し、驚く航平の両親に僕の心は穏やかにはいられない。
どう思っただろう。
やっぱり許せないかな・・・。
航平の両親に限って頭ごなしに反対はしないと思うけど、なんとなくネガティブ思考が身についてしまっていて物事を悪い方に考えがちだ。だから知らないうちに航平の子どもを生んでた上に黙ってたなんて知ったら、航平の両親は怒ると思ったんだ。だけど、全てを知った航平の両親はそんなことはなかった。
「ごめんね、真希ちゃん。航平のせいで辛い思いさせちゃったね」
そう言って目を潤ませるから、僕はいたたまれなくなる。
「そんな・・・悪いのは僕だよ。航平に嘘ついたから」
「真希ちゃんは悪くないのよ。こういうのはどう言う状況だとしてもアルファが悪いの。発情だってオメガと違って抑えられるんだし、それが出来なかった上に覚えてなくて夢だと思ってたなんて言語道断。全て航平が悪い」
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