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あの日を思い出す
炎天下だった八月最初の日。軋むようなタイヤの音と、重く鈍い不協和音が交差点に響いた。
蔵真は轢かれた幼馴染みを目の当たりにして、景色が反転するような感覚を覚える。木々に留まって大合唱を止めない蝉は、そんな蔵真を嘲笑っているかのようにも見えた。
意識を失う直前、黒で塗り潰された視界にモニターが出現する。そこで流れる映像には、蔵真が幼馴染みと一緒にコンビニに寄る様子が映し出されていた。
そしてその直後。二人の後ろにある交差点を猛スピードで横切っていったのは、一台のトラックだった。
ただしこれは、蔵真が選ばなかった過去。今更何を後悔しても、もう幼馴染みの命が戻ることはないのだ。
溢れる感情をせき止めようと歯を食いしばる前に、蔵真の意識は完全に途切れた。
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