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人というのは本当に驚いた時、一瞬で思考が奪われ動きが止まるということを。
目の前にいる男のその異様な姿にゾッとした俺は、今ならばすぐに玄関を閉めて鍵をかけ警察を呼ぶべきだったとわかるのだが、キャパを越えた状況では何も出来ず、ただはくはくと口を開閉していた。
「……すごく、芳しいね」
「ッ!!!」
その変態の言葉にやっとハッとした俺は、慌てて扉を締めようとして。
「……はっ!?」
ぐちゅん、と半透明な何かが引っ掛かり扉が閉まらなかった。
“な、なんだ……!?”
明らかに異常事態。
明らかに異常事態、なのだが。
「痛いよぉ……」
「あ、え?」
ぱんつで顔は隠れているが、その中から泣きそうな弱々しい声が聞こえてビクッとする。
そしてその半透明な何かが、その目の前の男の指から伸びていると気が付いて。
“そもそも、こいつどうやって俺が玄関に向かうまでの短時間でここまで来たんだ?”
エレベーター?
あり得ない。
階段?
速すぎる。
というか、この触手みたいなもんはなんだ。
動揺した俺は、これが理系の性というものなのだろうか。
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