イクサ場の12人

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イクサ場の12人

 勝者には望むモノを与えよう。  アナタはキョウトにイキたいカ? ───  ある日、晶という高校2年生の少女が見ていた動画サイトのアンケート画面にそんな質問が表示された。  内容が少なすぎてどこか怪しいのだが一応は動画サイトが責任を持って配信しているアンケート。  普段ならスキップしそうなものなのだが、心の中に小さなしこりを持つ彼女は誘蛾灯に引き寄せられた羽虫のように「はい」を選んでしまった。  それが三日前の就寝前。  そして現在── 「ここって本当に京都? どう見ても違うんだけれど」  晶は自分が置かれた状況に困惑していた。  右手に握るスマホの画面には知らないアプリの画面で「汝、卯の刻印を賭けてイクサに挑みキョウトを血に染めよ。十二支の刻印を揃え最後の一人になりし時、望み与えん」と表示されている。  ウイルスに感染したのかスマホは他のアプリを起動することが出来ない状態になっており、画面を弄ると周囲一体の地図が表示された。  画面にもキョウトと表示されていて確かに地図の図面は碁盤に似た京都の町並みを彷彿させる。  関東地方某所に住む晶には京都の地図だと言われても偽物だとはわからないほどだ。  だが実際に彼女の目に映る周囲の景色はとても京都には見えなかった。  地面は舗装など一切されていない砂利道。  全てが紙と木だけで作られた、まるで大昔の町並みが広がっていたからだ。  しかも周囲を見ても人の気配はまるでない。  京都は京都でも大昔の京都に迷い込んだとしか彼女には思えなかった。  そもそもアンケートに興味本位で同意したとはいえ自宅で寝ていたはずの彼女には何時この場所に来たのかすらわからない。  寝間着のパジャマだったはずの服装は剣道部の練習でいつも着ている少し汗臭そうな袴に変わっており、腰には帯を巻いていて刀を一振り挿している。  そして右手には先程も説明した通り故障してしまったかのように謎のアプリで固定されたスマホが一台。  彼女は気がつけばこの格好でこの場所に立っていた。  地図には自分の現在位置を示している兎のマークの他に蛇や猿などの動物のアイコンがいくつか。  ピンチアウトをして最大表示にすると、どうやらそれらは12種類12個あるようだ。  そして自分のアイコンに近づいてくる蛇のアイコン。  最初に彼女が気付いた自分以外の誰かが彼女の背後に忍び寄っていた。
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