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壱
消えゆく鬼の姿がこれ程まで美しいものだなんて知らなかった。
赤金色の火の粉に似た光が輝いて少しずつ消えていく。
「裏切り者の始末をしてまいります」
「·····えぇ、お願い」
今の状態の風美なら簡単に殺せるだろう。
危険因子の一つは消し去った。
元々、鬼神の血を受け継いでいる者は自分達の血族は忌み嫌っていた。
初代の闇神と鬼神は折り合わない存在だったからだ。
それが今でも子孫達が受け継いでいたのだ。
そして危険因子となるものはもう一人いる。
それを探し出してさっさと潰さないと···と、後ろを振り返れば
「!!?」
既に目の前にいて青嵐に向かって刀を振り下ろす瞬間だった。
鉄扇を持ったままで良かった。
「っ!?」
しかし振り下ろされた刀を受け止めた鉄扇はバキバキとありえないくらい折れていく。
魄の時もそうだったが
一体そんな細い身体の何処からそんな馬鹿力が出てくるんだ。
「青嵐様!」
風美を始末しようとしていた兵は青嵐の元へ戻ろうと走ってくる。
「···········
邪魔すんじゃねぇ」
青嵐の脇腹を蹴り、吹っ飛ばした翠は走ってきた兵に己の刀を投げる。
一瞬だった。
避けたはずなのに風圧によって首が飛んだ。
「風使いでもないのに何故だ?」と、言う疑問はきっとよぎっただろう。
その兵はばたりと倒れ風に乗って肉体が消えていった。
「····ぅ····っ···」
加減をしてくれていたのは何となく分かる。
一瞬では終わらせるつもりもないらしい。
それでも肋数本はやられたかもしれない。
ポツポツと空から冷たい雨がふる。
「······」
着物が濡れるのはいやだ。
さっさと立ち上がって翠を始末しなければと考えていた矢先に己の顔に影がかかる。
見上げればそこにいたのはか
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