16人が本棚に入れています
本棚に追加
星は4歳でモデルデビューし、それから女優の道に進んだ。
同年代の女優や俳優も、芸歴と圧倒的な演技力になかなか付き合いの距離は縮まらない。
RenはEtoileの中ではクールなイケメンキャラだが、実のところクールなのではなく、ただの人見知りで打ち解けるまでに時間がかかるだけだ。
2人が映画で共演した際も、特に親交が深かったわけではないが役柄上一緒の撮影も多く、徐々にRenは打ち解けていき、星もそんな不器用なRenのことをかわいい弟のように見守った。
その撮影で、星が個人事務所であること、映画などのその場でスケジュール調整が必要になる可能性がある現場はマネージャーは同行するが、雑誌などの仕事はひとりで行くことなどをRenは知った。
今日も星の周りには撮影スタッフ以外の姿はない。
Renは今日はチーフマネージャーの仲野ではなく、現場マネージャーの田中が同行していた。
星のもとへ行き、Renは確認する。
「星さん、今日はこれで終わり?今日もひとりで来てるんでしょ?車?」
「夜、事務所で打ち合わせがあるけど、一旦帰る予定。相変わらずひとりで来てるよ」
「その調子で運転できる?自宅はダメだろうけど、俺が運転して事務所まで送るのってダメ?」
正直、車で来たことを後悔していた星。
Renの申し出はかなりありがたいけれど…と思案する。
あまり効いていなかった鎮痛薬だが、時間的に切れてきており、更に痛みが辛くなってきていた。
「車でもタクシーでもいいんだけど、この状態の星さんをひとりで帰させられないからさ。ちょっと話合わせてくださいねっ!」
そう言うとRenは田中を連れて来た。
「田中さん、今日これで終わりだよね。映画の時にさ、星さんとこの社長さんと約束してたことがあって、今日星さんの事務所に行くことになったんだけど、ここ解散でいい?」
Renはわからないように星に目配せする。
「うちの社長が強引に…すみませんがよろしいですか?」
「共演の際はウチのRenが大変お世話になりまして、ありがとうございました。今日はこの現場で最後ですので、五十嵐さんがよろしければ特に問題ございません」
「いえ、こちらこそお世話になりました。ではすみませんが、少しRenくんをお借りします」
最初のコメントを投稿しよう!