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「あなた、顔が真っ青よ」
なんとか自宅に帰ると、妻は、驚いたようにそう言った。
顔色が悪い時は、市中のメディケア・ロボットが対応してくれるはずだ。
救急車を呼ぶのも、メディケア・ロボットの仕事なのに。
「病院AIに聞いてみる? 何の病気の可能性があるか、って」
「いや。理由は自分でも分かっているんだ。すこし休めば、大丈夫」
そう言って、僕は、ソファに横たわった。
今日見たこと。
子どもの「廃棄」と、ママ・ロボットの「廃棄」。
そのどちらも、今までだったら、当たり前に受け取っていたかもしれない。
でも、今、子どもを作ろうという段階に入った僕ら夫婦にとっては、他人事ではなかった。
「なあ……引っ越しをしないか」
僕は、温かいお茶をいれてくれる妻に、そう言った。
ママ・ロボットは、人間のように、「魂」や「心」を持つわけではない。
それなのに、人間と同じように、彼らにそれがある、と無意識の内に思い込んでいたのだ。
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