あるロボット技師の呟き

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「仕事もして、さらに出産や育児をするなんて、大変すぎるだろう? 人生は短い。やりたいことに集中しなきゃ」 「まあ、そうなんだけど」  そんな僕の言葉に、妻は歯切れが悪い。 「昔は女性が生んで、夫婦で協力して育てていたけれど、その結果、産後鬱による親の死亡率や、子どもの育児放棄が増えただろう?『趣味』申請しなければ、育児はできなくなったけれど、それで正解じゃあないか。今は、『虐待』で死ぬ子どもなんて、一人もいない」  僕の言葉に、妻は「そうね」と頷くものの、やっぱり歯切れが悪かった。  幼稚舎からの付き合いの妻は、薬剤会社の営業として働いている。  二十五歳ころに結婚する決意をした僕らは、精子と卵子を、それぞれ凍結した。  おかげで、今まで自由に仕事もできたのだ。 「人間の肉体は、必ず衰えていく。けれど、子どもが欲しいという気持ちも、仕事をしたいという気持ちも、どちらも諦めていいものじゃない」
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