あるロボット技師の呟き

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「そうね」 「だから僕は、人工授精と、人工子宮、そしてママ・ロボットは合理的だと思うね」  妻は僕の言葉に頷きつつも、「じゃあ、ママ・ロボットの予約をしておくわね」とは、言わなかった。 「そういえば、あなた。今日は朝から早いのね。大事な打ち合わせ?」 「どうやら機械のトラブルらしくてね。機械部署の人たちで検討会議さ」  大変ね、と言って、妻は僕を送り出してくれる。  普段は在宅で働いているが、たまに重要な会議の時だけはオフラインで会社に行く必要がある。  もちろん、「会社」と言っても、一日だけレンタルしたオフィスに行くだけだけれど。  今どき、会社のオフィスを常に持っている会社なんて、そうそうない。 ――僕たちにも、子どもができるのか。  わくわくしながら、僕は自動運転の車を走らせる。  愛しい妻との子ども。  ママ・ロボットに預けていても、週に一度は、会えるらしい。  ああ、早く、その顔を見たいものだ……。
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