あるロボット技師の呟き

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 だが、そんな期待は、「機械トラブルへの検討会議」で崩れ去った。  そこで検討されるべき議題は、僕が考えたものより、ずっと大きなものだったからだ。 「……なんですって?」  思わず、僕はそう訊き返していた。 「2093年3月12日の午前に製造された『ママ・ロボット』への指示が欠けていたようでね。彼女たちに育てられた者達の何人かが、未成年だが重大な犯罪を引き起こしている」 「それは……。子どもたちも「廃棄」になるってことですか」  上長は、うむ、と頷く。  まるで、当たり前のように。 「遺伝子学的な親達も、そんな子供は引き取りたくないと言っている。であれば、「廃棄」になるのが当然だろう」 「そんな……」  絶句する。  妻との子どもを楽しみにしていた僕には、思いもかけない話だった。
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