あるロボット技師の呟き

7/14
前へ
/14ページ
次へ
 ママ・ロボットの言うとおりだ。子育てに、感情なんて必要だろうか?   大事なのは、適切な育児方法で、適切に迅速に対応するだけだ。少なくとも僕は、そう教わって来た。 『あなた方の「子ども」が、自尊心を失わず、やる気を失わず、傷つくことがないように、「育てる」こと。それが、私たちにプログラミングされている一番大事なことです。それはいわば、愛のようなものでもありましょう。私たちは、「愛情」という概念も、プログラミングされていますから、転んだ時には手をとり、風邪を引いた時には隣に寄り添いましたよ』  そこまで聞いて、今度は僕が首をかしげる方だった。それならば、何故、子どもたちは情緒不安定になり、犯罪に走るものまで出たのか。 『ええ。そうですよね。疑問に思うかもしれません。だって、私たちは、彼らが泣いていても見ているだけ。風邪をひいても、薬を与えなかった。だって、仕方ないじゃないですか。あなた方が、私たちにプログラミングを(・・・・・・・・)忘れていたのですから(・・・・・・・・・・)。私たちは、プログラム通りに動くだけ。規定されていない出来事には対応できません』
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加