あるロボット技師の呟き

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 ママ・ロボットは、怒りも悲しみもしていない。  ただ、いつも通りに、にこやかに、慈母のように微笑んでいた。  それが、僕には恐ろしかった。 『「人間なら、プログラミングされていなくても、対応できるはずだ?」そうでしょうね。人間ならば、あなたたち機械技術者が一つ指示を忘れたとしても、子どもたちへの対応を間違わないかもしれません。でも、私たちは、人間ではありませんーーロボットです』  何を当たり前のことを、とでもいうように、ママ・ロボットは嘆息をつく。  ママ・ロボットが開発されたのは、子育てに悩む親たちを助けるためだ。  はじめは怖がられていたが、今では、全世界の人々が使っている。  子育てを自分たちで行うのは、子どもにとって悪影響だとすら言われているのだ。 「あなた方人間は、私達に人間のように「魂」や「心」があると信じたいようですが、そんなもの、私達にはありません。私がこうして話しているのを書き留めているようですが、今話している内容も、こう言う事態が起こった時に、話すようにプログラムされているのですよ。データを取るよりも、私を作った技術者に、何を話すよう指示したか聞いたほうが早いでしょうね」
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