あるロボット技師の呟き

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あるロボット技師の呟き

『何故この犯人が、このような異様な犯罪を起こしたのか、その理由は明らかになっていません』 「ねえ、あなた。私たちの子どもは、『誰』が育てることにする?」  薄型の大型テレビから聞こえるニュースの合間をぬって、人工子宮のパンフレットを持った、今年三十五歳になる妻が聞いてきた。  人間が人間を産む時代は、とうの昔に終わった。  現代は、子どもは人工授精によって両親のDNAを受け継ぐ。  十月十日は人工子宮のなかで育ち、両親の手によってへその緒を切られることで「出産」となる。 「別に、ママ・ロボットでいいんじゃないか?」 「……やっぱりそう思う?」 「育児が趣味って人なら、自分で育ててもいいだろうけれど。そんなの、時間の無駄だろう?」  妻と同じく三十五歳になる僕は、妻の問いに、ネクタイを絞めながら答えた。
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