エピローグ

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エピローグ

とても高い霊能力でこの町や学校を守っていた翔琉という少年の生まれ変わりであるということを俺は身にしみているのかもしれない。 だって… こんなことになるなんて誰が予想出来ただろうか… そう、ただこういうことで困っている奴って結構居るんじゃないかって思いついただけなんだ。 霊感はあっても自分で何とか出来る霊能力が高い子ってなかなか居ないから。 困ってるなら二、三人でも救えたら良いなって… 校長先生達やクラスの男子の発言もあって、まぁみんなに頼られるのも悪くはないし、少しは期待されてるって感じたから… それとなく旧校舎の前に投書箱っていうの設置してみたんだ。 投書箱は基本的には誰でもペンネームで入れれるまぁお悩み相談みたいな箱のことだ。 高さ五十センチ、横幅三十センチ位のダンボールで作った簡易的なやつだけどさ… 試しに置いてみたけど何も無かったぜ~!あはは…で済む話じゃなかった。 投書箱設置二日目に俺火竜とアンナと陽太でクラブ活動が始まる前に旧校舎の前に来て、一応投書箱を確認してみたんだ。 「そんな急に設置しても来るのかな?相談なんて…」 とアンナ。 これは正論だ。だって表立って口外してる訳じゃないし、その存在すら知らない人も多いから。 「物好きのイタズラ…とかなら入ってそうですけどね…」 と陽太。 これも正しいかも。 小学校でも低学年ならこれが何か分からず遊んだりイタズラしたりするかもしれない。 今の所イタズラするなとは外に書いてないし… まぁ物は試しだ。当たって砕けろ!だ。 思い切って投書箱に手を突っ込んでみた。 すると何通かある感触がする…! え、マジで? 冗談とかじゃなくて? その手を突っ込んだ勢いのままにその手紙を取り出してみるけど… どれもきっちりと封書をしてあり、イタズラにしては手がこんでいる。 というかイタズラには見えない。 「え、あったんですか!?」 陽太は驚き、眼鏡がずれたのかかけ直している。 「どうして!?何も宣伝してないよね?」 アンナも口をあんぐりと開けている。 「え、ええ!?俺だってどうなってるのか知らねーよ!」 一通ならまだしも十通以上なんて予想外だったからオロオロとするばかりだ。 そんな三人でオロオロしている状況に助け船が来た。 棗先生だ。 「あら?旧校舎に入らないの?みんな」 「それが…試しに設置した投書箱に予想以上の手紙が入ってたんです…」 陽太が代表で答える。 そう、全員まだ半信半疑だ。 「そういうことをしていたの?駄目よ、一応先生に許可取らないと…」 「そうだよね…ごめん先生…」 やべ…突然の思いつきだったから先生に許可を取るのを忘れていた。 「まぁ良いわ。今回はちょうど来たから良かったけど…次から何か新しいことをするなら先に相談すること!…多分その手紙全部本物ね。」 棗先生はそう言って手紙をじっと見つめていた。 まるで何かを見透かすかの様な澄んだ瞳で。 「え、どうして分かるの!?」 「先生は思念も見えるのよ。そのどれも困って子達が手紙を出した様子が見えるわ。みんなと同じ小学生から中学生以上も関わってるのかしら?…どこで噂がもれたのか分からないけど、霊感のある子達にだけその投書箱に意識が向く様になってるみたいね。君達の霊能力に反応してだと思うわ。」 え?俺そんな大層なことしてないけど? 「意外って顔してるわね。みんな…力ある者は力あるものに惹かれるものよ。蛍光灯に生き物が集まる感じね。」 「そ…そうなんだ…」 確かに夜中に外にある蛍光灯に虫がぶつかっていたのを見たことがあるな。 …そんな感じで合ってるのかな?虫ってのは失礼かな…? 「とにかく集めた以上何とかしてあげないといけないわね…これはおいおい考えましょ…」 先生がそう言い終わるか終わらないかのうちにものすごい地響きがした。 ゴゴゴゴゴ… まるで地の底から迫る様な大きな音が。 立っていられなくなって全員しゃがみこむ。 「みんな無事!?」 棗先生が叫ぶ。 「だ…大丈夫…だけど何が起きたんだ!?」 転びそうになっていたアンナと陽太の手を取って起こしてやって立ち上がる。 四人とも地響きがした方へと向かう。 本当に何が起きたんだ!? するとそこには信じられない光景が広がっていた。 「これは現実…ですか?」 「まさか…こんなことになるなんて…」 陽太も先生もアンナもあまりのことに少し震えている。 「火竜…どうするのこれ…?」 「お、俺に言うなよ…」 そう、俺が一人で何とか出来そうな案件ではなそうだった… 突然校庭が陥没したんだ。 さっきの地響きで? 急にぽっかりと口を開けたのだ。 どうすんだよこれ!? そしてその地底の中には土だけじゃなくて大きな要塞みたいなものがあったんだ。 はぁ…頭が痛い。 こんなのどうしろって言うんだよ。 土を埋めろってのか? は?無理無理途方もないって。それにそれで解決はしなさそう… 校庭半分陥没してるってのに。 さらにはさっきの投書箱の手紙の件もあるのに… こんなに同時に不思議な現象が起きるなんて思わなかった。 みんなを助けたいって思ったのは事実だよ? だけど、キャパオーバーというか限度ってもんがある。 そもそもあの要塞は何? 規模がでかいのがきたなーと頭を抱える。 こんなんじゃアンナに告白する所じゃねぇよ。 沢山の児童や先生が何事かと校庭に集まって来る。 この中にはあの投書箱に手紙を入れた子も居る…んだよな? …まぁ自分からやったことだし…少しずつ取り掛かる…しかないかぁ… まだしばらく、いや卒業までにぎやかで不思議な日々は続きそうだ。 俺の研ぎ澄まされ始めた予感がそう、告げていた。 END
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