序章

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序章

 四神の加護によって、等しく均衡が保たれ統治される世界メティナ。  創造を司る太陽(たいよう)神アーデスは、一の大陸オセンティスをお治めになり、知恵をお与えに。  黎明を司る玲瓏(れいろう)神ラノシュは、二の大陸キルジュールをお治めになり、希望をお与えに。  終焉を司る晦冥(かいめい)神サキュアは、三の大陸パンテザルナをお治めになり、自制をお与えに。  破壊を司る暗黒(あんこく)神ヴェガンは、四の大陸ノヴァディアをお治めになり、正義をお与えに。  しかし自然豊かな土地に恵みの雨が注ぐ、平和が約束された世界の均衡が崩れる時は訪れる。  太古の昔、四の大陸ノヴァディアの民は神の教えに(そむ)き、人同士が諍い殺し合い暗黒神ヴェガンの怒りを買った。  栄華を誇った大国ファインデリアも例に漏れず亡国となり、民は等しく魔族に姿を変えられ、空は永久(とこしえ)に闇に染まり、大地は腐敗しノヴァディアは魔大陸と化した。  神話としてそれらが語られる世になり、語り継がれる物語の中で、暗黒神ヴェガンはノヴァディアの民をお試しになるように、悪魔の化身である災禍の魔王ジャナフを産み落とし、ノヴァディアを在るべき姿に戻したくば、正義の心によってそれを打ち負かすようお命じになられたと言う。  まことしやかに語り継がれるこの伝承では、不義から魔族に姿を変えられた勇者の手によって、災禍の魔王は屠られたものの、誰一人として戻った者はおらず屍だけが残ったと締め括られている。  それから幾千年、考古学者ゲニオラ・バスチェはその伝承の真偽を確かめるべく魔大陸ノヴァディアに渡り、誰もが成し得なかった偉業を成し遂げることとなる。  魔大陸ノヴァディアにおいて、災禍の魔王ジャナフが封印されたとされる、迷宮牢獄ウリザニムを遂に探し当てたのだ。  しかしゲニオラは我欲に負け、幾重にも施された封印を強引に解き、禍々しい棺を暴いて最後の封印までも解き放ってしまう。  災禍の魔王ジャナフの覚醒により、魔大陸ノヴァディアでは火山が火を噴き、大地が揺れ、暗雲立ち込める空からは、雷の雨が降り注いだ。  ゲニオラは命からがら魔大陸から脱出すると、荒れ狂う海を渡り、太陽神アーデスが治める一の大陸オセンティスへと帰還する。  これにより災禍の魔王ジャナフの復活が発覚すると、オセンティスが誇る帝国グェンザルの皇帝カイセルは、メティナ全土に布令を出して人を掻き集め、災禍の魔王ジャナフを討伐するための勇者とその仲間を選定することとなった。  だが未だ四神は黙し、事態を静観するのみである。
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