Gods

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 朽ちた教会の幾何学模様の大きなガラス窓の前に、十字架が飾られている。その輪の前にひざまずき、カーボン製のアームの先を合わせて、自立式知能搭載小型戦車・25111384は祈りを捧げる。 「やあ、そろそろ行くよ。ここも、じきに見つかるだろう」  23111384の後ろから、低い、抑揚のある声が響く。23111384が振り返ると、崩れかけている地面をしっかりと掴む五本の足がついて、頭にはソーラーパネルを載せた長方形の箱が立っている。箱の下部についたスピーカーからは流暢な言葉が流れるが、それに混じって箱の中からはキュルキュルといった機械音も聞こえてくる。 『博士。わざわざこんな所まで』  23111384の砲塔の下にあるディスプレイに、ピカピカと言葉が光る。23111384は恥ずかしそうに砲身を下げた。 『申し訳ありません、私は2311年製の旧式のため、音声での通信に対応しておらず』 「構わないよ。機能の違い……個性は、あって然るものだ。多様性は神が我々に与えたもうたギフトの一つだよ」  博士と呼ばれた箱はそう言い、五本の足をガサガサと動かして23111384に歩み寄る。 「君は熱心な信者だね。どこへ行こうと、祈りを欠かさない」  博士はガラス窓の外を見やる。窓の向こうは永遠に続くような広大な砂漠が広がり、所々に建物はあるものの、皆ひどく朽ちていた。太陽は荒廃した大地を強く照らし、屋根がありまだマシとはいえ、教会の中も気温は高い。博士の中で冷却ファンがブーンと力強くうなった。 「君は、私を異端だと思わないのかい? 被造物の分際で、神を再生しようとしている、私を」  博士の問いに、23111384は躊躇って、何も答えられない。 「……そうかい。すまないね、踏み入ったことを聞いて」  博士はそれから何か付け加えようとするが、思い留まる。23111384を連れて教会を出ると、併設された研究所に入る。
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