路地裏

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「私のお人形……。廃品──ジャンク──になっちゃったぁ」 にたぁ~。と、女は首を不自然に曲げ、恍惚の笑みを浮かべ。 人形を投げ捨てた。     指から出た血で染まった女の口元は覗く歯も真っ赤で……。 暗闇に映える鮮やか過ぎる赤い色に私はぞっとした。   どう見ても異常者だ。   後退った私の腕に女は手を伸ばし、言った。   「新しい……。う、で」   余りにも低いその声に私は水を打たれたように手を振り払い、走った。     後ろから、追いかけて来る女の声が聞こえる。   「ジャンクのままじゃ、可哀相」   その言葉とは裏腹に女の声は明らかに笑みを孕んだものだった。     路地裏を何度も曲がり、女がもう見えない事を確認して。 私は大きな鉄製のゴミ箱の影に隠れ、ケータイ電話を取り出した。   勿論、誰かに助けに来て貰う為だ。     トゥルルルルル──   出ない。   出ない。出ない。出ない。   誰も出てくれない。 真夜中だからだろうか。 いや、まだ誰か起きてる筈だ。   友達を諦め、兄にかけた時。         「くくっ」     背後から、笑い声が聞こえた。      image=369809767.jpg
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