みそぎはらい

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 こんな辺鄙(へんぴ)な場所で、宵祭りなんてやっていたんですね。全く気づきませんでした。だって、ねえ?この川を見てくださいよ。滝じゃあるまいし、ザーザーうるさくて祭囃子もへったくれもありゃしません。    この奥はね、杉林になってましたよ。で、なんだか獣道みたいなのがずぅーっと伸びているんです。雨が降る前に、焚き火を持って進める所まで進んでみたんですよ。  ただ、なんというか……気配は感じるのに、人独特の音や匂いってあるじゃないですか。そういったものが全くないんですよ。いやあ、薄気味悪いったらありゃしない。一人でまた行けって言われても、御免被りたいですね。  幽霊だなんて考えただけで、背筋が凍りそうですよ。    貴方もその面、取ったらどうですか?  こんな場所で狐の面だなんて、洒落にならないですよ。私、臆病なんでね。  え?  追い剥ぎが出ると、私が言った?  何故、幽霊の話をしているのか、と仰っしゃりたいんですね。  ああ、ですから。  残穢(ざんえ)が全くないのに人の気配だけがあるから、ほら貴方がつけている面。そういう物をつけた、悪い奴がいるんじゃないかって思ったんです。  息子さんが心配ですか。  生憎、私には妻子がおりませんでしてね。まあ、俗に言う女嫌いというやつです。だから、本当に安心してくださって大丈夫ですよ。  妻子がいるような歳に見えない。ハハ。確かにそうかもしれませんね。  私の女嫌いは、母親から来てましてね。こんな話を、赤の他人にしちゃっていいのかな。まあ、ずっと待ちぼうけしてますから、良いか。貴方も、暇つぶしの与太話だと思って聞いてください。  
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