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そうこうしているウチに、少しおかしくなった母を見失いましてね。直前まで、お面売りの屋台前にいたはずなんですが。神隠しにでも遭ったんじゃないかってくらいに、忽然と姿を消したんです。途中から雨も降り始めて、そりゃあ慌てて探しましたよ。
足を滑らせて、どこかで頭でも打ってるんじゃないかってね。
田舎の祭りですから、居そうな場所を探して歩くのは苦じゃなかったですよ。人はそれなりに多かったですけれど、狭い場所でごったになっているだけですから。
神社を抜けて、杉林を抜けて、こんな所に獣道なんてあったのかって場所まで探しました。祭囃子が随分、遠くなってしまったなあと思った所で、母を見つけたんです。
私の同級生とまぐわってました。
何番目のでしたかねえ……家に連れ込んだ男と思い込んじゃってまして。しきりに名前を呼んでは、戻ってきてくれたのね。嬉しい。なんて言ってるんです。
同級生は、私の母だと知ってました。けれどね、尋常小学校を出て数年かそこらの坊主が、女の肌を拒むなんて出来る訳がないんですよ。同級生なりに罪の意識があったんでしょうね。狐の面を母にかぶせて、後ろから突いてました。
私に見つかって、同級生は仕舞うもんも仕舞わないで逃げ出しましたよ。叫び声くらい上げたら良いのにって思いましたね。まるで私が、悪い奴か幽霊みたいじゃないですか。
着物をだらしなくはだけさせたままの母に、おいおい同級生はそんな名前じゃないぞって、言ってやりましたよ。全く、みっともないったらありゃしない。
それで、雨も降ってるし帰ろうって手を引いたら、アンタとなんか一緒に行かないって喚き始めたんです。
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