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ガキが出来た途端、私を捨てたくせにって。
――……ああ、思い出しました。
貴方でしたか。
私の母は。
待ち人は、貴方だったのか。
なんであんな事をやっちゃったんです?
元々、顔と身体くらいしか取り柄のない女だったじゃないですか。
それが頭、おかしくなっちゃって。
年齢だって……ねえ?
一緒にいてあげられるのは私だけって、どうして分からなかったのかなあ。毎日顔見てるんだから、それぐらいは覚えられたでしょうに。
貴方の顔を石で潰したのもね、また同じことをやると思ったからです。ついでに頭まで潰れてしまうとは思ってなかったから、吃驚したなんてもんじゃなかったですよ。
え?殺意なんてあるわけないでしょう。
当然の成り行きだったんじゃないんですか?
でも、どうしてだか分からない事があるんですよね……貴方を置いて、走って家に帰ってしまった。それで、すっかり雨の上がった次の日、家に火をつけてしまったんです。
袖に入っていたマッチは……ああ、思い出した。その時のものか。
それから私は、どうしたんだろう。
――……もしかしてここ、三途の川ですか?
なるほどねえ、賽の河原。道理で一向に渡れないワケだ。
ほら、母さん。見てください。私の掌が焼け爛れ始めてますよ。
ほらほら、ちゃんと見て。足元も爛れ始めてる。
私も馬鹿だな、あの家に残っちまったのか。
どうやら、死んでる最中みたいですよ。
あんな家、消えてなくなれば良いんだって思って、燃やしたはずなのに。
どうして、こんな事になっちゃったんでしょうねえ。
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