今度は私が魔法をかける番

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 恋心と下心が無かったとは言わない。でも、困った顔で涙を堪えてるマリを見て黙っていられなかった。 「マリは知らねーと思うけど、俺魔法を使えるんだよね」  中学生特有の病だった可能性もある。でも、俺の言葉でマリが「何言ってんの」なんて笑ってくれた瞬間、なんだって良くなった。だから、マリに魔法をかけたんだ。 「マリがこれからも好きなことを好きでいられる魔法」  それっぽく、手に持っていたペンを振ってマリの周りをくるくると動かす。性別も、年齢も関係なく好きなことを好きでいてほしい。特に、俺の好きな子には。  ましてや、好きなことでそんな悲しそうな顔をしないで欲しかった。だって、マリの困り顔を見ると胸の奥の方がぎゅっとなっちゃうし。  周りがなんと言おうと俺は、マリの漫画が好きだった。下手くそだろうと、精一杯描いたその原稿がとても大好きだった。 「変人」 「変人だけど、魔法使えんのはほんとだし」 「はいはい、ありがと」  瞳にうっすらと浮かんだ涙は、流れることなくそのまま表面張力ギリギリで揺れていた。
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