今度は私が魔法をかける番

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***  新卒入社から気づけば、五年も経っていた。俺もいつのまにか中堅と呼ばれる社員になり、仕事にも慣れ始めた。疲れることも、辛いこともあるけど、それなりの日々を過ごせてる。  急な案内だった同窓会に意気揚々と参加したのは、数年ぶりにマリに会いたいからなんて下心だった。「待ち合わせして向かおう」とメッセージを送れば、すぐに「りょーかい!」のスタンプが返ってきた。  マリはどんな大人になってるのだろうか。そんな不安と期待で待つ外の風は生ぬるい。 「海斗、久しぶり」  綺麗な大人に成長したマリが俺の前で手を振っている。あの日の困り顔ではなく、満面の笑みで。 「お、おう、キレイになったな」  素直に出てきた言葉は、褒められてもいいと思う。ワンピースに、まとめ上げられた髪の毛は大人の色気を漂わせていた。 「海斗も大人っぽくなったね、ってあたりまえか。私たちもうアラサーだし」 「そうだな」  同窓会の会場の居酒屋は、ガヤガヤとした喧騒に満ちていて懐かしい顔ぶればかりだ。 「とりあえず、好きな席座ってくださーい!」  幹事が声を張り上げて、会費を払い終わったメンバーを案内する。俺とマリは必然的に隣同士になってしまった。 「マリちゃんじゃん! キレイになったね」
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