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理由は、ずっとジェフリー様が俺の後孔を解しているせいだ。もどかしすぎて、何も考えられなくなりそうなのに、決定的な刺激は与えられない。
「止めろ……止めてくれ……っ、ぁァ――」
「敬語はどうしたのかな? エドガー」
「あ、ぁ……あああ……もう、もうヤだ、ぁア! ああ……っ」
全身が熱くて、訳が分からなくなってしまった俺は、ついにボロボロと泣きながら、何度も首を振った。
「まだまだ夜は長い。だから、きちんと今夜のメニューも考えないとね」
笑み交じりのジェフリー様の声音が、室内に響いている。他には、俺の後孔を暴くジェフリー様の指がまとった香油の水音がする。他には――俺の声がする。
「あああ、ジェフリー様ぁ! お願いだ、あ、ァ! もうイきた――」
「まだダメだよ。本当、君はダメな執事だね。堪え性が無さ過ぎる」
「ひっ、く……んン――!」
声を抑えられなくなった俺は、泣きながら喘いだ。いつ、己が意識を飛ばしたのかは、覚えていない。ただその後、懐かしい夢を見た。
◆◇◆
そう、これは夢だ。
まだ十三歳だった俺は、幼い妹の手を握っていた。
貧民街の片隅で、ガクガクと震えている妹の体をなんとか温めようと、片腕で抱き寄せ、もう片方の手では骨のような妹の指先を握っていた。
俺達は貧民街で生まれ育った兄妹だ。
父は最初から不在で、母は妹を俺に引き合わせると、再び貧民街を出ていった。
せめて孤児院の前に捨ててやれば良かったと当時の母には言いたいが、娼婦をしていた母は、貧民街の片隅に、俺を住まわせる小さな家を一応構えていたのでそこに妹を連れてきたのである。母は俺に妹を預けると、富豪の愛人になる事が決まったからとして、二度と会う事は無いだろうと笑って去っていった。
それが母を見た最後の記憶で、その後俺は、妹と二人で生きてきた。
食べるものもほとんどなく、痩せた土ではいくら野菜を植えても育たない。週に一度、孤児院や教会の人間が炊き出しに来てくれる事が、俺と妹にとっての命綱でもあった。
だが、妹のマリアは、昨日から発熱している。満足に食べられない状況では、風邪は十分な死因となる。俺は決意し、破れた薄いボロボロの毛布をマリアの肩にかけてから、笑った。
「待ってろ、すぐに戻る」
「お兄ちゃん、どこへ行くの?」
「ごみを捨てに行くだけだ」
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