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ジェフリー様の手の動きが激しくなり、俺はそのまま初めて、他者の手で果てさせられた。その後もジェフリー様の腕の中でぐったりしていると、優しく頭を撫でられた。もう一方の手では、俺の放った白液を指に絡め、そちらをぺろりとジェフリー様が舐めていた。その瞳が、どこか獰猛に見えた。俺はそれを見たのを最後に、眠るように意識を落としてしまったようだった。
次に目を覚ますと、俺は小屋にいて、そのボロボロな室内には不似合いなジェフリー様と、その正面に座っているマリアが見えた。ハッとして、どこからが夢だったのだろうかと瞬きをした俺に向かい、マリアが満面の笑みを浮かべた。
「お兄ちゃん、目が覚めて良かった。貧血で倒れたと聞いてびっくりしたの!」
「貧血……」
「まぁ、貧民街の私達には、仕方のない事だけどもね。それより、ジェフリー様のように素敵な方に助けて頂くなんて! 本当に運が良かったのね、お兄ちゃん」
「……」
俺は窺うようにジェフリー様を見た。こちらは柔和な笑みを浮かべている。最後に目にしたと思ったような獰猛さは何処にもない。人の良さそうな貴族にしか見えない。
「その上、お仕事まで頂ける事になるなんて、本当に私達は幸運ね」
「え?」
妹の声に、俺は素直に首を傾げた。
マリアは病弱だから、今は家にいる。俺は外で働いているふりをしながら、盗みをしている。それが実情だ。
「ナイトメア伯爵家のメイドにしてくださるそうなの。それも、体調が良い時だけ働けばいいって仰って頂いて! これで私もお兄ちゃんの役に、少しはたてるはず!」
「マリア……」
俺は気にしなくて良いと言おうとしたし、ジェフリー様が下心無しにそんな都合の良い提案をするとは思わなかった。
「エドガーの目もさめた事だし、早速行こうか」
しかし俺の前で、立ち上がったジェフリー様が話を進めた。妹も嬉しそうに入口へと向かう。先に外へと出た妹を引き留めなければと考えて、俺もまた立ち上がった。そして手を伸ばして一歩前へと出た時、ジェフリー様が俺の耳元に唇を寄せて囁いた。
「妹さんの病気が治る薬も用意できるよ」
「!」
「君の働き次第だけどね、エドガー」
「な」
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