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定められた魂
太古の昔、とても仲の良い夫婦がいた。
まだ、神が人に、人が神に近い時代の事だった。
その夫婦は、お互いを思いやり、食べ物がない時でも二人で仲良く分け合い、どちらかが病気になれば片方は自分も病気になりそうなほど心配しながら看病をし、助け合いながら生きていた。
神は空からその夫婦を見ていた。
『天の上でも神同士の争いがあると言うのに、あの二人はちっぽけな人間でありながら、何と立派なことだ。この後、何度生まれ変わろうと、必ず一緒にしてあげよう。』
と、自分に誓った。
やがて、二人は人間としての寿命を終える。最初に夫が亡くなり、妻は嘆き悲しみながらも夫を丁重に墓に埋め供養した。
近所の人に、『自分が死んでしまったら夫の隣に埋めてほしい。』と丁重にお願いして、元々近所の人たちからも好かれていた妻は願い通り、夫の隣の墓に葬られた。
その後、二人は何度か生まれ変わった。
ある時は二人とも猫に。
ある時は二人とも犬に。
ある時は夫は人間で妻はネズミに。
ある時は妻は人間で夫はライオンに。
でも生まれ変わるたび、必ず二人は神の願い通り一緒になった。
同じ種族の時は勿論、別々に生まれても必ず二人の魂は一緒になり、猫の時も、犬の時も、他の猫や犬とは違い生涯を二匹で仲良く過ごした。
例え人間とネズミであった時も、人間とライオンであった時でも、二人はひかれあい、一緒に暮らした。
ネズミの時はネズミ捕りにかかった妻を気の毒に思った夫が、そのままネズミにご飯を上げて、妻の魂のネズミもすぐに夫に懐いてネズミの生が終るまで仲良く暮らした。
ライオンの時は妻がライオンの保護の仕事をしていたので、そのセンターで赤ちゃんだった夫の魂のライオンを育てながらライオンが自然に帰るときまで仲良く暮らした。夫の魂のライオンは妻の魂と離れるのを嫌がって、なかなか自然に帰れず、妻に苦労をかけはしたが。妻を困らせることに気づき、やがて立派な雄ライオンとして自然に帰っていった。
そうして、長い時を経て、ようやく二人は同じ年の人間に生まれ変われた。
もう、ロケットが宇宙へと打ち上げられる現代になっていた。
二人は全く別の国に産まれたが、運命は変わらない。
二人は同じ勉学を志し、やがて、NASAに就職する。
NASAでの訓練中に二人は恋に落ちた。
そうして、二人共同じチームになって宇宙へと飛び立つことになった。
宇宙に飛び立つ前に、二人は将来を誓いあい、結婚した。
神様は、ようやく人間としてまた一緒になれた二人を見て、満足した。
二人の魂はどこまでもひかれあっている。
『この先、きっとまたどんなふうに生まれ変わっても、ずっと一緒にいられるはずだ。』
神の世も昔とは違い、もう神同士の争いも起こらなくなっている。
結局のところ、喧嘩ばかりしていた神は、太古の昔の力を持った人間に、喧嘩をしないように離された神社におさめられてしまっていたから。
今、天にいる神は、最初に人間に興味を持った、他の神との争いをしなかった神だけなのだ。
二人の運命を決めた神は天に一人残されてはいたが、神なので寂しいなどとは思わない。
地球上のあらゆるところを見つめ、また運命の二人を見つけようと天から目を凝らしている。
【了】
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