11. 二度と会えない

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本命で本気なら、ズルく賢く強引にいくべきなんだと凛を通して痛感した椿。 そこまでしても、凛が椿を手に入れられないように、この世には叶わない事の方が沢山あるのだから。 今何もしないで悶々とする時間が、いかに意味のない無駄な事で。 繭と気持ちを通わせながら過ごしていた過去が、いかに奇跡的な事だったか――。 すると突然、素早く白衣を脱いだ椿はそれを凛に手渡して伝言を頼む。 「悪い、急用出来たから午後の診察は他の先生で回してって伝えておいて」 「はあ!?私が?誰に!?」 「埋め合わせは後日必ずする」 そう言って通路を走り出した椿は、少し離れたところで一旦足を止めると、振り向いて凛に微笑みかけた。 「俺も、自分の気持ちに嘘つきたくないから」 「えっ!?」 「凛、気付かせてくれてありがと」 凛の真っ直ぐな考え方が椿を突き動かして、そしてとうとう本能のまま病院を飛び出していった。 伝言を頼まれた凛の腕の中には椿の体温が残る白衣があり、それを見つめたあと少しだけ力を込めて抱き締める。 「……別に、こんな展開を一番に望んだわけじゃないし」 だけど、認めたくはないが散々振られてきた凛の恋は、とっくに実らせられないとわかっていた。 だったら本気で好きになった椿が、自分を振ってまで本気だという恋の行く末を見届けて。 「きっぱり断られて弱ってる時に、私が椿を慰めたら効果大よね……」 次のアプローチチャンスに結びつけようと計画を立て始め、まだまだ椿を諦めきれない様子の凛。 しかし徐々に視界がぼやけてくるのがわかって、天井に視線を向けると白衣に一滴だけ涙をこぼしてしまった。
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