11. 二度と会えない

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*** 今日は、朝から少しだけ身体に違和感を覚えていた。 しかしその違和感が何なのかハッキリとわからないまま出社した繭は、午後の仕事を開始した頃には違和感が消えていたので。 自席で問題なく仕事をこなしていると、部長が声を掛けてくる。 「里中、そろそろ個人面談の時間だけどいけるか?」 「はい、大丈夫です」 厳しい暑さも最近は和らいできて、季節が秋へと変化していく中。 繭の体も変化し妊娠五ヶ月に突入したお腹を抱えていたが、服を着ていると少しだけ膨らんできた下腹部は全くわからないので、周りにはまだ公表していなかった。 特に負担は感じていなかったのに、部長と繭が並んで通路を歩き面談室へと向かっている中、一瞬足元をふらつかせた繭が部長の腕を掴む。 「す、すみません……」 「おい、大丈夫か?具合悪いのか?」 「そういう訳でもないんですけど……」 曖昧な答えが返ってきて、尚更心配そうに繭を見つめる部長。 ここ一ヶ月、妊婦でありながらもバリバリ仕事は片付けていくし、当たり前のように残業しようとするから部長が無理矢理帰らせる事もあった。 それに前回の妊婦健診から計算すると、そろそろ次の健診があるはずなのだが、繭からの休暇希望が未だに申請されていない。 気になる点が多すぎると感じた部長は、面談室に到着して席に着くと、向かいに座った繭へと真っ先に質問したのは仕事のことではなく。 「男と何かあっただろ」 「え……?」 以前話に聞いていた、結婚を迷っていたお腹の子供の父親とのいざこざを疑っている。 繭の表情も暗く、仕事に没頭するのはプライベートからの逃避傾向だと部長は考えていて、事情を知る者としては見ていられなかった。
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