11. 二度と会えない

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「……っいや……!!」 「繭さん?」 「……お願い、いなくならないで……」 「繭さん落ち着いてっ」 椿の言葉も空しく、ついに涙がだらだらと流れて制御がきかなくなる繭は、お腹を力無く撫でながら震える声を発した。 椿の子を宿しているという価値だけで、自分が愛されているのだと言い聞かせておきながら、お腹の子を利用して椿に愛されたかったのは他でもない。 繭自身だったんだ。 そんなズルい考えを消し去りたくて、凛の登場をキッカケに椿から手を引いた繭。 別れは辛く悲しいものだとしても、もう一度純粋な気持ちを取り戻し、自分のお腹の中ですくすく育つ我が子と向き合いたい。 そしてやっと、無性の愛であると自信を持って言える時が近づいていると思っていたのに。 「椿さん……私っ……赤ちゃ……」 「大丈夫、大丈夫だよ繭さん」 「っで……でも……」 「俺が二人とも助けるから、必ず守るからっ」 「……うぅっ、……っ!」 そしてついに我慢出来ないほどの痛みに襲われた繭は、そこからの意識が途絶えてあまり記憶していない。 ただ何となく、病院に到着したらしい車が停まりエンジンが切られると、車内はシンと静まり返り。 後部座席のドアを開けた椿に、何度も名前を呼ばれていた気がした。 涙で濡れた頬に指先の温もりを感じると、優しく抱き抱えられた感覚が肌を伝って。 まるで羊水の中をふかふかと泳ぐ胎児になったように温かく、それがとてつもなく優しく心地よくて。 繭は再び、無意識の中で涙を流した。
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