12.

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*** あれからどのくらいの時間が経ったのか全くわからない中、少しずつ意識を取り戻した繭は重い瞼をようやく開けた。 一番最初に映し出された見覚えのない天井が、繭にとってはまだ夢を見ているような感覚にさせてくる。 首だけを左右に動かして辺りを確認すると、落ち着いた雰囲気の室内に、布製の二人掛けソファがあった。 そして壁に掛けられた時計が示していたのは、社員が仕事を終えて帰宅を始める時間。 まるで誰かの部屋のような空間だが、枕元に置かれたナースコールの押しボタンが目に止まる。 「…………?」 そしてやっと、自分は今病室のベッドに横たわっていて、いつの間にか腕に刺された針は点滴であると理解した。 まだ頭がぼんやりするも必死に情報を集めていると、あんなに辛かったお腹の痛みが消えている事に気付いて急に血の気が引く。 「……っ、赤ちゃん……」 自分の体なのに、お腹の中にいるはずの子供の様子がわからなくて不安に駆られる繭。 あの激痛を小さな我が子が耐えられるとは思えず、再び涙が溢れて瞳から静かに一筋流れたところで。 コンコンと扉をノックする音が部屋に響き渡り、扉が開かれる。 「……繭さん、目が覚めた?」 「っ……椿さ……」 眼鏡を掛けて白衣を纏った椿が、優しい表情で姿を現し繭の方へ歩み寄ると、様子を伺うように近くの丸椅子に腰掛けた。 その顔を見た瞬間、張り詰めていた糸が切れたように色んな感情が沸き出て、繭は大粒の涙をこぼし始める。 そして、うまく言葉が出せないながらも今一番知りたい事を、恐る恐る質問した。
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