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「繭さんの体は、切迫流産といって安静にしていないと妊娠継続が難しくなる状態にあるんだ」 「え……」 「お腹が張らないように点滴してるけど、しばらくはお手洗い以外の行動は禁止」 言葉だけなら聞いたことはあるけれど、詳しくはわからなかった繭の表情が固くなる。 しかし、トイレ以外の行動を制限されるほど危険な状態なんだと理解し、今は絶対安静が不可欠なんだということももちろん納得した。 何より、お腹の子の危機が乗り越えられるならどんな事も苦ではない。 「症状が安定するまでこの病室で過ごしてもらうよ、仕事も外出もできないから」 「……わかりました、よろしくお願いします」 「…………」 切迫流産の件も入院についても素直に受け入れた繭に対して、少し驚いたように目を丸くして沈黙する椿。 何か他にも説明があるのか、それとも自分が変な事でも言ったのかと不安になる繭が口を開いた。 「……椿さん?」 「あ、ごめん……」 「??」 「……もう俺に診断されるのも、この病院での入院生活も断られるかもって思ってたから」 「えっ……」 今にも消えてしまいそうな不安げな表情と、弱々しく呟いた小さな声で正直に胸の内を話した椿に、繭の胸の奥にチクリと針が刺さる。 突然身を引いた自分の行動が、椿をここまで不安にさせていたとは思っていなかった。 まるで繭に拒否される事を恐れているような椿の言動に、今更ながら別れを選んだ自分の答えは自分勝手なものだったと感じ始める。 椿を想う期間も生活レベルもルックスの釣り合いも、凛と繭では比べ物にならないほどの差があると痛いほどわかっていた。 そして椿の愛は、繭ではなくお腹の子への愛なんだと決めつけた。
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