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パーティーの時に話していた椿の想いは本当で、目標達成の難しさを理解しつつも当初の事を振り返る。 仕事が終わって飲みたい気分の夜は、決まって先輩のバーに顔を出していた椿。 それを度々繰り返していると、カウンターにいつも一人で酒を飲んでいる女性の存在に気が付く。 もちろん毎回ではないが来店日が被った時は必ず先に到着していて、離れた席に座る椿に目を向ける事なくマスターと夢中に会話をしている。 そしてオーダーを聞くためマスターが椿の下へ向かうと、会話を終えた女性はキリがいいのか帰り支度を始め、支払いを済ませて店を出ていくのだ。 だから接触はもちろん、会話もなければ目が合ったことも無く、女性は椿の存在すら知らない。 その女性に対して、最初はいかにも仕事出来ます感漂う頑固で近寄り難いイメージを抱いていた椿。 自分を誘惑してくるタイプではないと安心して、でも何となく存在は気になり遠くから眺めるようになっていた。 すると遊びの対象ではないと判断したせいか、マスターとの会話で時折見せる無防備な笑顔を繰り返し繰り返し見ているうちに、ついに目が離せなくなる。 椿の抱いたイメージからかけ離れた優しい笑顔と、控えめに漏れる笑い声。 良い意味で裏切られた椿は、次第に女性の事を見ているだけでは物足りなくなっていき、やがて深く知りたいと願うようになる。 そして、凛が日本を離れて二ヶ月が経ったある日。 例の女性がいつものように椿より先に帰ったタイミングで、何となく聞き出そうと試みた。 「先輩」 「マスターって呼べ」 「今帰った人、この店よく来てますよね」 「あ〜いつも仕事帰りの9時くらいに来て、椿が来る時間には帰る人なんだよ」 なるほど、だからいつも入れ違いのように帰って行ってしまうんだと理解した椿は、更に情報を欲した。
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