冥途の土産

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「えっなに!? ちょっ反応薄くない!?」 「いや、俺、虚弱体質の癖にあの会社で無茶しちゃってたので。そりゃそうかと思いまして……ところでどちら様でしょうか」  強面の大男は、疲れた顔から少し拗ねた顔へと表情を変えた。そんなに反応が薄かっただろうか。 「僕はね、閻魔大王だよ。君……いや栗原青夏(くりはらせいか)くん。もうちょっと自分の状況を理解した方がいいよ〜? 過労死で死ぬにしては早すぎるんじゃない? ほら見てよこの鏡。生前の君真っ青で仕事してるじゃないのよ」 「あぁ閻魔様はじめまして。そうは言われましても……リヴァイブの開発が終わった後も、運用業務で忙しかったので……この4年間、開発に携われて光栄でしたし、頑張っちゃった? 結果です」 「あぁ、はじめまして〜っていやいや、僕閻魔大王だよ? しかも、そんな胸張って頑張りましたと言われてもね!?」 「すみません……?」  なんか、想像していた閻魔様とはかけ離れているな。もっと厳格な方だと思っていたのに。  ジョボくれた閻魔様は、特大サイズの扇子を取り出すと暑いと仰ぎながら話を戻した。 「まぁ……君が死んだ事実は変えられないから、次の手続きに移ってもらうつもりでいるんだけど。冥土の土産はでいいのかい?」 「え……冥土の土産?」 「その、なんて言うんだっけ? パソコンって言うんだっけ? それじゃないの? 思い入れがあるのは分かるけど、君冥土に来てまで仕事するつもりなのかい……」  閻魔様は顔を引き攣らせながら、人の胴体ほどある指で俺の手元を指す。視線を向けると俺の手には、いつの間にか仕事で使っていた高性能PCが握られていた。 「なんでPCが。あの冥土の土産って――」
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