第1章 『Black & Pink』

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第1章 『Black & Pink』

  Chapter 1 『Black & Pink』  Act I  scene i  1997年7月  現代の日本よりも少しだけ前のお話――  適度な日差しが心地良く、湿気をあまり含まぬ風が吹く、北海道特有の過ごし易い夏の日の午後。  キーンコーンカーンコーン……  日本から遠く離れた英国にある、ウェストミンスター宮殿に付属する時計塔ビッグ・ベンの鐘を模した音色が、今日もこの学校に放課後を告げる。 「あー、やっと今日も終わった~!」 「疲れたね。これから部活?」 「うん、そうだよ! もうすぐ夏休みだから、今の内に課題終わらせなきゃならないんだ~」  北海道立栗川高等学校・一年三組の教室から聞こえて来る、生徒達の何気ない会話。声の主は、このクラスの女子生徒・芝 睡蓮(しば すいれん)と宮田 檸檬(みやた れもん)だ。二人とも眼鏡っ子である。 「大変だね、美術部も……。あ、華夜は帰るのかなぁ?」 「おっ、聞いてみよっか。華夜~!」 「ん~、どしたのぉ?」
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