マゼさんと私のお約束

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 私は森の奥にある小さな小屋に薬を取りにやってきていた。そして、扉を開けて「こんにちは」と伝えると、中にいたマゼさんが慌てて、「どうしましょう」と声をあげてしまった。  あぁ、タイミングが悪かった。だけど、そう思ってにっこり微笑む余裕は私にはある。マゼさんとの付き合いは、それくらい長い。 「大丈夫ですよ、待っていますから」 そう言って、木の椅子に腰掛ける。 「ごめんなさーい」 そう言って慌てているのがここに住む魔女マゼンダ。朱色の縮れ髪が、深い緑色のとんがり帽子から見えている。初めは私と同じくらいの年齢だったが、今は、私が随分年上だ。そして、私がマゼさんと呼んで、親しんできている方だ。彼女は年齢含め、何も変わっていない。 「どうしましょう」 「どうされました」 「途中で一端止めてしまったのでどこまで混ぜたか……忘れてしまいました」 こういうやりとりはいつものこと。私はゆっくりと腰を上げて、一緒に大釜を覗き込んだ。 「だいぶ煮詰まっていますね」 「はい……」 「では、ゆっくり考えましょう」 「はい。トニさん、よろしくお願いします」
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