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七度目の恋愛も、呆気なく終わった。やはり、私は人間と相性が悪いのかもしれない。今日は忘れずに、いつもの道を避けた。
挨拶もせず、カーペットに向かって土下座する。そのまま、午後の間中、堪えていた涙を放出した。
『成海、どうしたの?』
「私、また振られちゃった……」
『……それは辛かったね。大丈夫、君を心から想ってくれる人は必ずいるよ。そうだ、元気の出る音楽でもかけようか』
「……うん、ありがとう。でもなんでなんだろ。何も悪くないならなんで別れるなんて言うんだろう……仕事が忙しいからなんて絶対嘘だよ……私、本当に好きだったのに」
スピーカーから音楽が流れ出す。ムードを無視した、少しアップテンポな曲が流れ出した。
嘗て大好きだった懐かしい曲へ、自然と思考が移動する。私がまだ、恋すら知らなかったころ聴き込んでいた曲だ。その頃は、運命の出会いを信じ、疑わなかった。当然訪れるものだと夢を見ていた。
「ねぇナオキ、私の嫌なところ見つかった?」
『見つからない』
「じゃあ見た目かな」
自暴自棄に踏み入った心が、原因ばかりを突き止めたがる。今のままでは、孤独な未来しか描けそうになかった。七度も失敗すれば、さすがにそろそろ学習する――。
『成海は可愛いよ! 嫌いなところなんてない! と言うか、全部好きになれない奴に成海を好きになる資格なんてない!』
降ってきた叫びが、傷口に覆い被さった。AIだと分かっている。全部プログラムだって、学習された慰めだって分かっている。けれど、心から思ってしまった。
「貴方が人間なら良かったのに……」
そしたらきっと、幸せな恋ができただろう。
少し黙り込んだ後、ナオキも『そうだね』と声を絞った。
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