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夢ならよかった
「警察だ! 彼女から離れなさい!」
空気を切り裂く声で、男の動きが停止する。なんとか視線を持ち上げ、扉付近を捉えた。言葉通り、入室していたのは警察だった。
二人組の警官が、鍛えられた俊敏さで男――ナオキを引き剥がす。ナオキは抵抗していたが、あからさまに敗北していた。
「離せ! 彼女は僕が幸せにするんだ!」
連行されながらも怯まない口が、訴えを吐いている。初めて愛の言葉に竦んだ。
やっぱり事情は分からない。けれど、多分私は騙されていた。
「お嬢さん、大丈夫ですか?」
立ち代わりで入ってきた警官が私を覗き込む。差し出された手を取ってはみたが、力が制限され起きられなかった。
警察官に助けられ体を持ち上げる。目にしたスピーカーは、変わらず瞬いていた。
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