夢ならよかった

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 警察は冷静になる猶予を与えてくれたが、私から拒否した。一刻も早く状況を知るべく、当日の内に署へと同行する。  気にかけられながらパトカーに揺られ、小部屋に入ると蒼真がいた。椅子から跳ね飛び、私の元へ駆け寄ってくる。そうして体を包み込んでくれた。 「成海! 良かった、心配したよ……!」  言葉にぴったりの声色と、融合する温度が緊張の糸を切る。これこそが“特別な事情”だったのだと悟った。二つの安堵で、塞き止められていた涙が飛び出す。 「なんで蒼真が……?」 「ストーカーに脅されてたんだ。成海と別れないと、お前と成海に酷いことをするって……それで、警察に相談して解決するまでは離れていようと思ってた。彼、君の身辺のことは全て知っていて、変に刺激しちゃいけない雰囲気で……なんて、こんな話は必要ないね」  ぶつ切りにされた話から、とある憶測が広がりだす。  今まで別れた人たちも、きっと脅されていた。そして、あのスピーカーは恐らく――。 「ごめんね、怖い思いをさせてしまった……」 「ううん、いいの。もういいの……」  今さら“ナオキ”との日々を思いだし、戦慄に見舞われた。全てを掻き裂く気持ちで、指先に力を込める。  こんなことが起こるなんて、思いもしなかった。いや、思える訳がない。きっと私じゃなくても、誰にも予測できなかったことなのだから。 「次、行き先決めるの僕だっけ」 「うん……」 「じゃあ、遠くへ行こう。遠くへ行って、静かに暮らそう」 「…………うん」
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