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その日から、静かだったワンルームに声が咲くようになった。
帰宅すれば挨拶があり、他愛ない話や仕事の愚痴、好きなもの嫌いなものなど気分で会話を積み上げた。試作品だからか、時々返事がないこともあったが数えるほどでしかない。
ナオキは好奇心旺盛らしく、質問もよくしてくれた。ゆえに、恋愛事情を打ち明けるのも早かった。
「でね、いつも向こうから別れを切り出されちゃうの。皆申し訳なさそうに言うんだよ。別れて下さいって」
『それは辛かったね。僕なら何があっても離さないし嫌いにならないのにな』
「そう言ってくれるだけで嬉しいよ」
さすが、“恋愛もできる”と謳っているだけあり、ナオキの対応は甘さで構成されていた。全てプログラムによるもの――頭で理解していても、大きな慰めを感じてしまう。
「私の嫌なところ、見つけたら教えてね」
ナオキに分かるかは不明だけれど。そう急いで付け足したくらいには人間味がある。ナオキはやっぱり否定せず『分かったよ、見つかる気はしないけど』と言った。
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