序章 「ようこそ、最高で最低な一日」

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 彼女のくちびるにぼくの視線が集まる。シフォンケーキのように柔らかいくちびる。触れてしまうととけてしまうほど繊細。それを壊したいというあやうさを感じながら、ぼくはかたまる。  危うい性癖を行使しないだけ。  ぼくも彼女と同じように目をつぶる。悟りがひらかれるような予感はない。  男女が向き合いながら、目をつぶる。他人が見たらなんと思うだろうか。  ばっちーん。  勢いよくビンタがおそってくる!  美咲が血相を変えて、ぼくの前に立っていた。  「あれ、蚊がいた?」
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