序章 「ようこそ、最高で最低な一日」

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 それから数日はなにもなかった。少なくともここで表現するようなことは。カットだ。  ただ日常というのは、決して平坦ではなく平坦に見えるだけ。同じ日というのは、存在しない。当たり前だ。ただ同じ日を繰り返しているような錯覚を覚えているだけ。 「あれ、なんかこの景色見たことあるな」と初めてきたはずの場所で感じたり、「夢で見た出来事が現実に起きている」と錯覚したりすることが稀にある。  それはただの錯覚。錯覚で間違いないのだろう。 幽霊や宇宙人の仕業というのも否定できないが。人間は錯覚の中を生きている。そうは考えられないか。   ぼくはその日、学校が休みなので近くの公園で黄昏ていた。休日は時々、公園のベンチで寝そべりながら夕焼けを眺めていた。ベンチの上に東屋があり日陰となっていて涼しい風を感じることができるので、すごく心地よい。  それはぼくにとって当たり前な時間だった。
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