序章 「ようこそ、最高で最低な一日」

17/28
前へ
/380ページ
次へ
 当たり前のぼくの時間を鮮やかな群青色に変えたのは、愛しき人の姿だった。彼女の姿を見ただけで 自然に笑顔が出る。  東屋のすきまを夕陽が差し込み、彼女を照らした。彼女の表情からは、感情は読みとれない。そんな淡泊な表情は相変わらずだ。  「おはよう、仁くん」  「おはよう、エリザベス」   彼女はぼくの隣に座る。ぼくのほうはぎくしゃくしてしまうが、彼女の表情からは緊張などは感じない。まるで緊張なんて概念を知らないみたいに思える。  「エリザベスの家は近くなの?」彼女の肩に手を回しながら言いたい。  「そだよ」  「前からここらへん?」  「うん」  「中学一緒じゃないよね?」母校の名前を付け足した。  「違う」  公立の中学校の区分けがおかしいことはよくある。同じ地区でも一丁目まではA中、二丁目と三丁目はB中みたいな分かれ方は割とあると思う。  「もしかして、あそこの中学校?」その中学校の名前は伏せておく。  「うん」  「やっぱり。マジかー。こんなに近いのになー」  「近い?」  「えっと、ぼくもこの近くに住んでるんだ」  「、、、」彼女は無言でこくりと頷いた。そのジェスチャーになんの意味があるかは分からない。  「それより、ちょっと訊いていいかな?」  「うん」  「なんでバニースーツとか着ているの?」
/380ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加