序章 「ようこそ、最高で最低な一日」

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 彼女は30分くらいぴょんぴょんと飛び跳ねた後、東屋の下にあるベンチで彼女を堪能しているぼくの横にちょこんと座った。空はいつの間にか薄暗くなっていた。オレンジのカーテンがぼんやりと空を包み込む。  「きれいだね?」  彼女はぼくの隣できょとんとする。  「空、きれいだね」  「きれい」  「この世界でこの景色を見ているのはぼくとエリザベスだけなんだぜ」  彼女はこくりと頷いた。   しばらくお互い、なにも話さなかった。  "何も話さない"を楽しめるような関係に彼女となれたらなとぼくは思っているが、彼女は一体何を感じながら空を眺めているのだろうか。  同じ空を眺めていても、その空になにを感じるのかは人それぞれだ。  「犬すき?」彼女はしみじみとそう言った。  まるで沈黙の続きみたいな声だった。    
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