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「遅くなってごめんね。もう大丈夫よ」
走ってきたのか、苦しげに息を弾ませながら、しかし包み込むように温かいその声は、聞き覚えがあった。
声の正体がわかると、その姿も自ずと瞼に思い浮かぶ。
緩くウェーブがかった栗色の長い髪に、緑の瞳。透き通るほど白い肌に、満開の花畑が似合う眩しい微笑み。
俺は人間ではないのでわからないが、きっと彼女のような人を『美しい』というのだろう。
「アメリ……。何故、君がここに……」
思わず口をついて出た心の声さえ、理解し拾う不思議な女性。
「ジル……嬉しい! 初めて名前を呼ばれたわ……!」
生まれて初めて出会った、言葉が通じる人間。
薄目のまま、ゆっくりと頭を捻ると、驚くほど至近距離にその顔があった。
「あっ……と。ごめんなさい、今は喜んでる場合じゃなかったわね」
アメリは瞳を揺らすと、薄赤く染まった頬を隠すようにして立ち上がった。
そして、改めて男たちに毅然と挑む。
「あなたたちは、ここがイングリーフィズの動物保護区だとわかった上で、こんなことをしているのかしら? ここは一切の外部侵入を許していません。密猟なんてもってのほかよ。今すぐ立ち去りなさい!」
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